建築製図 基本の基本


まえがき

 わたしが「建築製図」の勉強を始めたのは、大学1年生のときでした。大学でだされた最初の製図課題は、大学内に実際に建っている学生会館の図面をそのまま模写するというもので、手描きで非常に読み取りにくい図面だったと思います。
 それまでに線や文字の練習をはじめ、図面の描き方やルールなど、一切教わらない状態で、いきなりその図面を渡され、どこから描いていいのか、どうやって描いていいのか、まったくわからず困惑していたことを記憶しています。
 結局、本屋さんに行って、「建築製図の基礎〇〇」などという類の入門書を購入し、独学で勉強し、その課題をなんとか仕上げたような気がします。大学は高校までと違って、先生からいろいろ教わるのではなく、先生が教えてくれないことも自分で調べて自分で学ぶという気持ちがなければ落第すると痛感したものです。
 それから数年後、わたしは工業高校の建築科の教師になりました。そこで初めて、今までに見たことのない丁寧な建築教育に触れることになります。教科書も初心者にわかりやすく、授業も基礎をしっかり積み上げていく内容で、うらやましく思えたくらいです。しかし、中学を卒業したばかりの高校生には、それでもまだ難しい内容であるということがわかってきました。特に、今まで正確に線を描いたことのない生徒にとっては、建築製図の細かくて接近した線を、太さや線種を使い分けて正確に描くことは至難の業です。

 夢を抱いて「建築」の世界に飛び込んできた人が夢半ばにして挫折してしまうのは、製図の緻密さに嫌気がさしてしまうのがほとんどのように思えます。
 そこで、本書は緻密な建築図面をいきなりまともに描くのではなく、実際の縮尺よりも大きくして描くことで、基礎をしっかり固めながら、正確にそのコツを身につけることができる仕掛けになっています。
 本書の特徴は以下のとおりです。
@本来、縮尺1/100で描く図面を倍の1/50で描くことにより、図面の描き方やルールをしっかり身につけることができる。
A各種図面について、丁寧な作図手順を示すことで、理解しながら図面が描けるようになる。
B各種図面は、それぞれ他の図面と関連付けながら作図できるようになっている。
C「屋根」「開口部」は特に理解しにくいので、解説がより丁寧になっている。
D演習課題を随所に入れ、作図練習ができる。
(必要に応じて本書をコピーして使いましょう)

 ぜひ、最初から最後まで、一通り目を通されたあと、すべての演習課題に取組んでみてください。必ず力がつくと思います。
 本書は初めて「建築製図」を学ぶすべての人に贈ります。本書で勉強して、建築を好きになってください。

2010年11月  櫻井 良明