一本の通りだけでなく、その向う側、横町、裏通りを含めた街全体、あるいは界隈そのものが商店街の魅力である。もち論、法律や要綱でいう商店街はその区画が厳密に定められているが、それは来街客にとって何の意味もない。否むしろ、商店街の外れにポツポツとある住宅街の店舗に魅力的な店があったりする。つまり商店街空間は店舗とその顔だけでなく、通りそのもの、坂や辻、通り抜け通路、仕舞屋、住宅街、銭湯、社寺、小公園などあらゆる要素が重層的に集まったものである。
ここではそうした要素を@「はみだし」や「店構え・人構え」を含めた店そのもの、A商店街の三点セットといった従来の概念にとらわれず、より原点に係わる要素としての看板やアーケードなどの装置、B商店街にとって決定的な空間基盤であり、実に豊かな表情を見せてくれる道や辻、坂などの街路空間、C今に残る文化遺産といってもよい町家・仕舞屋という順に取り上げた。
残念ながら現在建て替えられつつある町家の質は決して昔のものに及ばない。新しい商業空間もここにとりあげる商店街空間の魅力に果たして勝てているだろうか。