タウンリゾートとしての商店街

あとがき

 本書を書く契機となったのは、(財)大阪地域振興調査会の自主研究組織「ショッピングタウン研究会」(主査:石原武政・大阪市立大学教授)での議論と各地の商店街視察の経験である。

 私の本業は都市開発や都市・地域政策のシンクタンクであり、商店街の専門家ではない。仕事上、二、三の商店街活性化計画を立案したこともあるが、どちらかといえば都市政策の立場から取り組んできた。「ショッピングタウン研究会」においても、私の発表したテーマは「シティリゾート論からみた商店街」ということで、リゾート論、都市論をベースとした商店街への問題提起であった。

 執筆の依頼があった当時は商店街そのものというより、新しいショッピングストリートや商空間に着目した本にする気持でいたのが、いつの間にか商店街に真正面から取り組む結果となり、実に脱稿までに4年もの期間を費してしまった。その間、本業の中で大店法がらみの「和歌山県中小小売商業活性化計画」「大阪市HOPE計画」「埋立地の界隈空間づくり」「住まい・まちづくりミュージアム(仮称)」などの調査研究を行った。

 和歌山県の調査を除くと、一見、商店街と無関係のように思えるが、HOPE計画では商店街を含めた住宅の再生や制度手法を、界隈空間づくりでは新しい都市開発におけるパッサージュや町家型商店街の可能性を、そしてミュージアム計画では、都市と町家の歴史について研究することができた。

 「商店街」というキーワードが常に頭の中にあったおかげで、こうした都市づくり関連の仕事も幅と奥行を持ち得たし、逆に本書の内容にもその成果を盛り込むことができた。

 しかし商店街の専門家でもない、都市史の専門家でもない私が、商店街を切り口に大上段に構えた議論を展開したので、とんでもない誤解や間違いがあるのではという不安もある。読者の御批判をぜひ賜りたいと願っている。

 最後に、商店街の理論と現場を教えて頂いた石原武政先生、商人や商店街の原点を語られた故島内三郎先生、町家の歴史を教えて頂いた谷直樹先生、界隈やパッサージュの魅力を教えて頂いた鳴海邦碵先生、遅筆で乱筆の私を根気よくはげまし、小見出しまでアイディアを出してくれた編集者の前田裕資氏ほか、お世話になったすべての方々に心より感謝したい。

一九九四年六月
著者 吉野国夫


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