日本の都市環境デザイン

第4部 はじめに


 阪神・淡路大震災は、 都市環境デザインに関わる者に大きなインパクトを与えた。 そのインパクトは多面的であり、 また、 個人的でもあるが、 極めて根本的であることは間違いない。

 阪神・淡路大震災直後のJUDI会員の動きについては、 関西を中心に JUDI NEWS 23号で紹介したが、 その後の活動にはめざましいものがあり、 これについては別途とりまとめる必要があろうと考えている。

 こうしたさまざまな活動の中で、 〈都市環境デザインは何をなしたのか?〉〈都市環境デザインは何をなすべきなのか?〉などの問いに、 それは自らの問いであったり他者からの問いであったりするが、 晒された会員が多かったのではないだろうか。

 実際、 被害実態の調査に共に歩いたある会員は、 〈環境の快適さばかりに目が行って安全性など考えてこなかったなァ〉と独り言ちたし、 復興まちづくりを支援しているある会員は、 〈日ごろからのまちづくり活動がやはり大事だな〉と強調した。 また、 倒壊した建物が片付けられ、 まるで新興住宅地のような景観がそこら中に現出するにつれ、 〈やはり都市環境デザインの役割は重要だ〉と確信をもって表明する会員もでてきた。

 こうした状況下で、 都市環境デザイン会議の関西ブロックでは、 以下のようなセミナーを連続的に開催した。 これらのセミナーが、 後掲する榊原論考の背景にある。

  1. 震災を契機に都市環境デザインを見直す〈95.5.27〉
  2. オープンスペースを考える〈95.7.1〉
  3. 道路を含むオープンスペース・ネットワーク〈95.7.29〉
  4. やわらかい都市・しなやかな都市〈95.9.2〉  この震災特集ともいえる一連のページは、 以下の内容によって構成される。

    (1)震災によって見えてきたもの

     ----これは学生たちに、 震災後のさまざまな経験の中で発見した都市環境デザインに関わる現象について、 記述してもらったものである。 復興まちづくり等に関しては、 他にも伝達するメディアがあるので、 ここではできるだけ素直な気持ちを表明してもらうよう依頼した。

     原稿の取りまとめ等については、 関西ブロック会員の小浦久子と大阪大学大学院生の三宅正弘にお願いした。

    (2)ポスト阪神・淡路大震災の都市環境デザイン

     ----この大震災はこれからの都市環境デザインに大きな影響を与えると思われる。 現下の問題意識について、 関西ブロック会員で、 主に土木デザインに関わっている榊原和彦が執筆した。

    (3)「震災復興市民まちづくり」で見えてきたこと

     ----震災復興のまちづくり支援ネットワーク形成において、 中核的な役割を果たしている関西ブロック会員の小林郁雄が、 これまでの経験を踏まえて、 都市環境デザインの果たすべき役割について論じた。

     以上、 震災直後の素朴な印象記と、 震災後数箇月の間に行われたさまざまな熱い議論を踏まえての考察とが、 ここには含まれている。 こうした印象や都市環境デザインに関する考え方が風化しないよう、 さまざまな場面で復興に取り組むとともに、 都市環境デザインの向上を目指していく必要がある。


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    学芸出版社『日本の都市環境デザイン 85〜95』

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