日本の都市環境デザイン

第1部 はじめに


 第1部は本書のいわば理論編とでもいうべき部分である。 都市環境デザインの理論といっても、 都市環境デザイン会議の活動の展開につれて深まっていく側面もあり、 限られた紙数の中でどのような構成にするかは、 極めて重要な課題であった。

 まず第一段階で、 〈都市環境デザイン:現在と展望〉という全体テーマが設定され、 具体的には(1)都市環境デザイン会議の設立の経緯や意義、 (2)都市環境デザイン会議会員の構成と活動領域から都市環境デザインのあり方を論じる、 (3)都市環境デザインの動向と時代認識を検討する、 (4)都市環境デザインの理念および本書の編集方針について述べる、 といった方向が示された。

 このような提案に対して、 社会の現在的な関心、 すなわち会員が現在直面している課題、 あるいは将来重要になると思われる都市環境デザイン上の課題について、 論を展開すべきとの意見が出された。 また、 都市環境デザインに関わる既成の分野の動向を重視すべきで、 それらの分野的な視点からそれぞれに都市環境デザインについて論じてみるべき、 との考え方もあった。 そうした意見に基づき以下のような編集方針が取りまとめられた。

(1)都市環境デザインの今

 都市環境デザインの考え方は時代とともに変化しており、 各分野における関心の持たれ方の変化を論じつつ、 都市環境デザインの動向と時代認識について論じる。 特に、 80年代の状況認識は重要であり、 都市環境デザイン会議設立前夜の状況について述べる。

(2)都市における建築のあり方

 建築は都市を構成する重要な要素であり、 また都市環境デザインに携わる人びとは建築分野の出身者が多い。 かつて建築分野からの都市への発言が多くみられたが、 現在は停滞しているといえる。 そのあたりの状況を論じる。

(3)変貌する土木世界

 土木の分野において、 景観に対する傾斜が著しい。 パブリック・デザインという新たなジャンルへの挑戦もみられ、 都市環境デザインの新しいあり方として、 この分野からの視点の変化について論じる必要がある。

(4)ランドスケープからの都市環境デザイン

 都市環境デザインは、 外部空間の総合デザインとみられる傾向もある。 こうした分野において、 ランドスケープの分野の試みが盛んになりつつあり、 また、 〈自然〉のデザインの新しい方向に関する関心も高い。

(5)まちづくりの端緒としての景観づくり

 都市環境デザインに関する関心は、 まず景観の分野に現れた。 ここから〈参加するまちづくり〉〈わかりやすいまちづくり〉が展開しようとしている。 基本的な視点としてこの観点から論じる必要がある。

 以上のテーマの重要性は編集委員各位の認識するところであった。 これらに加え、 さらに以下のテーマに必要性が論じられた。

(6)インダストリアル・デザインからの視点

 ストリート・ファニチャーのデザインは長い歴史をもっており、 都市環境デザインの領域において、 実際的にも産業的にもこのジャンルの役割の重要性が認識されてきている。

(7)都市環境デザインとアート

 デザインという概念に関連し、 例えば公共空間に彫刻を持ち込むことが都市環境デザインである、 という認識も一般にはある。 この観点から論じることによって、 都市環境デザインの役割を示すことが必要である。

 およそ以上のような経緯で、 第1部の内容構成が決まってきた。 理論編としてまだまだ論じるべき点は多いと思われるが、 今回はこのような構成で都市環境デザインの領域を示すとともに、 これから取り組むべき課題を論じることとした。


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学芸出版社『日本の都市環境デザイン 85〜95』

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