日本の都市環境デザイン


 21世紀を目前にした今、 振り返ってみると、 20世紀は都市化の時代であったと見ることができよう。 それは具体的には、 村を離れ都に向かう〈向都離村〉現象や、 地方から大都市に向かう〈大都市化〉現象が顕著な時代であった。 特に戦後の50年間は、 大都市化の時代といっても過言ではない。

 こうした都市化、 大都市化の時代にあって、 都市環境形成に関する手法や考え方は、 みずから成し遂げたものと呼応しつつ、 向上しあるいは変化してきた。 そして今、 世紀末現象ともいえるいわゆるバブルの崩壊や、 大都市地域に大きなダメージを与えた阪神・淡路大震災は、 都市環境形成の技法や考え方に対して新たな問いかけとなっている。

 〈魅力のある都市の形成〉が社会的な関心となりつつあった91年の5月、 2年間の準備期間を経て、 都市環境の形成にかかわるさまざまな分野の人びとが集って、 都市環境デザイン会議が結成された。 以来6年近く、 都市環境デザインの向上を目指したさまざまな活動が各地で展開されてきた。

 本書は、 この10年間の都市環境デザイン分野の状況を振り返りつつ、 〈都市環境デザインの思想とその到達点〉〈都市環境デザインの方法とその成果〉〈でき上がってきた面白い街〉〈阪神・淡路大震災と都市環境デザイン〉の4部構成で、 都市環境デザインの手法と目指すべき方向について取りまとめたものである。 多くの会員の努力によって作成された本書は、 都市環境デザインの将来を導く書となることを確信している。

 都市環境デザインの目的は、 〈住みやすく魅力的なまち〉を形成することにあり、 そのためには、 多くの分野、 多くの人びとの協力が不可欠である。 本書は、 都市環境デザインの基本的な考え方を示すとともに、 都市環境デザインの具体的なプロセスについてもわかりやすく示しており、 専門家の方々にも、 これから都市環境デザインやまちづくりを学ぼうとする者にとっても、 有益な情報源となるものと考える。

  1996年3月


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学芸出版社『日本の都市環境デザイン 85〜95』

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