アジア・アフリカの都市コミュニティ

「手づくりのまち」の形成論理とエンパワメントの実践

はじめに

序章 アジア・アフリカのまちづくり:論点   城所哲夫

1 インフォーマル市街地と手づくりのまち
 1.1 インフォーマル市街地とは?
 1.2 手づくりのまちの可能性
2 アジア・アフリカにおけるまちづくりの潮流と論点
 2.1 貧困緩和政策と居住政策
 2.2 居住政策とまちづくり:潮流と論点
3 成長するコミュニティ・ガバナンス

第1部 東アジア・東南アジア

第1章 ──インドネシア
「手づくり」の居住環境改善事業とその展開   志摩憲寿

1 カンポン改善プログラムの到達点
  1.1 カンポン改善プログラムへの評価
  1.2 カンポン改善プログラムの到達点
2 インドネシアにおけるインフォーマル市街地の居住環境改善策の系譜と現在
  2.1 カンポン改善プログラムとインフォーマル市街地の居住環境改善策の系譜
  2.2 現在:「2019年までにスラムなき都市を」
3 「手づくりのまち」の展開可能性:インドネシアの経験から

第2章 ──タイ
都市コミュニティをめぐる組織化と地域化   柏崎梢

1 バンコク・メガシティの誕生とスラムの生成
  1.1 城壁からの都市化
  1.2 膨らむスラム人口
  1.3 スラム政策とコミュニティの萌芽
  1.4 タイ的なる「コミュニティ」主義の影響
2 「スラム」から「都市コミュニティ」へ
  2.1 コミュニティの登録開始
  2.2 テーマ型グループの急増とネットワーク化の拡大
  2.3 投資先としてのコミュニティへ
3 新たな変容としての地域化
  3.1 コミュニティのフォーマル化
  3.2 バンコクのコミュニティ組織協議会
  3.3 コミュニティ組織協議会の実態分析
  3.4 コミュニティ組織協議会の事例
4 コミュニティの組織化と地域化プロセスから見える展望と課題

第3章 ──フィリピン
セブ市における土地取得事業導入過程   小早川裕子

1 インフォーマル市街地の拡大と土地取得事業
  1.1 インフォーマル市街地の形成
  1.2 国家の都市貧困削減政策
2 インフォーマル市街地、バランガイ・ルス
  2.1 バランガイ・ルスの誕生とスラム形成過程
  2.2 土地取得事業導入前のルス住民の経済状況
3 土地取得事業の導入と住民の選択
  3.1 コミュニティ抵当(CMP)事業導入までの経緯
  3.2 CMP事業導入当時の住民の選択とその社会性
  3.3 関係アクター間の隠れた目論み
4 コミュニティ開発の3段階プロセス

第4章 ──中国
城中村現象とその住環境整備   孫立

1 城中村現象の出現
  1.1 農民工の急増と城中村の出現
  1.2 城中村の特質
2 二元体制と城中村
  2.1 改革開放以来の急速な都市化
  2.2 都市・農村分割の二元体制
  2.3 城中村形成のメカニズム
3 城中村の住環境
  3.1 賃貸住宅市場における城中村の役割
  3.2 住環境悪化の要因
4 城中村の住環境整備事業の課題と展望
  4.1 無形改造(制度上の改善)
  4.2 無形改造の評価
  4.3 有形改造(再開発)
  4.4 有形改造の評価

第2部 南アジア

第5章 ──バングラデシュ
ダッカにおけるスラムの空間・社会・文化  ナンディニ・アワル、北原玲子

1 メガシティの貧困
  1.1 都市化とスラム
  1.2 人口増加とスラム
  1.3 ダッカのスラム
  1.4 スラムの生活状況
  1.5 スラムの再開発
  1.6 バシャンテック・スラム
  1.7 カライル・スラム
2 スラムの空間と社会
  2.1 低コスト住宅の空間と生活
  2.2 オープンスペースの役割
  2.3 低コスト住宅の空間構成
3 スラムの空間と文化
  3.1 低コスト住宅の建材と配置
  3.2 生活と労働の空間
  3.3 相互扶助の仕組み
4 スラムの持続可能性
  4.1 小規模ビジネスの役割
  4.2 スラム改善の考え方
  4.3 低コスト住宅の改善
  4.4 これからのスラム再開発

第6章 ──インド
ムンバイ・ダラービーの社会生態空間   鳥海陽史、城所哲夫

1 社会生態空間の捉え方
2 インフォーマル市街地形成の制度的要因と改善策
  2.1 インフォーマル市街地形成の制度的要因
  2.2 インフォーマル市街地の改善政策の変遷
3 ダラービーの社会空間の特徴
  3.1 ダラービー地区の概況
  3.2 棲み分けと共生の論理
4 ダラービーにおける交流の場の生成と特徴
  4.1 住民間交流の場の類型
  4.2 交流の場の生成と共生の論理
5 ダラービーの社会生態空間の形成論理

第7章 ──パキスタン
「在る」ものを活かした住環境改善   森川真樹

1 インフォーマル市街地での住環境改善
2 学習する組織とアプリシエイティブ・インクワイアリー(AI)
  2.1 組織学習論
  2.2 学習する組織
  2.3 アプリシエイティブ・インクワイアリー(AI)
3 住環境改善におけるAI活用事例
  3.1 イスラマバードの住環境改善事業
  3.2 二つの住民組織での事例から
4 そこに「在る」ものを活かす

第3部 アフリカ

第8章 ──ザンビア
ルサカのインフォーマル市街地における空間マネジメント  梶原悠

1 インフォーマル化する都市・ルサカ
  1.1 都市・ルサカの起源
  1.2 ルサカの都市空間構造
2 インフォーマル市街地の改善施策
  2.1 「(法定および改良地区)住宅法」の制定
  2.2 改良地区における開発規制
3 インフォーマル市街地における空間マネジメントの実態
  3.1 チャイサとチャザンガ
  3.2 居住空間の特質
  3.3 土地所有と権威の所在
  3.4 外部空間の利用
  3.5 開発行為の規制
4 持続的な空間マネジメントの構築に向けて

第9章 ──ケニア
ナイロビにおけるノンフォーマルスクールの
空間生成プロセスと近隣との関係   井本佐保里

1 ナイロビのスラムとノンフォーマルスクール
  1.1 ノンフォーマルスクールの位置づけ
  1.2 ナイロビ・ムクルスラムの概要と調査手法
2 ムクルスラムにおける学校の空間生成プロセス
  2.1 設立経緯と所有関係
  2.2 立地条件と建物配置
  2.3 教室のしつらえと工夫
  2.4 設備・サービスとその整備
3 ノンフォーマルスクールと近隣との関係
4 学校と近隣との新しい関係

結章 「手づくりのまち」の論理   志摩憲寿、柏崎梢

1 各章事例に読む「手づくりのまち」の到達点
  論点1 マス・ハウジングvs. セルフ・ヘルプ・ハウジング
  論点2 エンパワメントvs. 市場活力
  論点3 コモンズvs. 私的土地所有権
2 「手づくりのまち」の論理

索引

おわりに