公共事業と市民参加


書 評
『環境緑化新聞』 2007.9.1
 持続可能な発展を国是とした社会基盤のもと、幼児からの環境教育や、市民・企業・自治体が一体となった活動で、環境と経済の両立を図っているヨーロッパの環境先進国から学ぶものは多い。
 本書では著者が訪れたスウェーデン、デンマーク、ドイツ各国の環境問題への取り組みの実態を具体的に紹介してある。「環境会議」「日経エコロジー」「ブレーン」等へ掲載したレポートをベースに書き起こした文章は、平易で理解しやすい。
 著者は市民や地域の実践が国を動かし、他国へ影響を与え、世界をリードするヨーロッパの実情を紹介し、日本におけるヒューマンウェアの不足を指摘する。
 著者がいうところのヒューマンウェアとは、地域社会に住む市民が行政、企業と協働し、自らの意思で環境保全活動を具現化していく知恵で、環境保全型の地域社会を構築していく基盤である。
 ヒューマンウェアが具体的に成果を上げた環境先進国の事例は、ヒューマンウェアを発揮するためのバックボーンを今後整備していかなければならない日本にとって貴重な情報となるはずだ。

『建築知識』(エクスナレッジ) 2007.9
 筆者は地球温暖化を解決するうえで一番効果的な対策は、「ヒューマンウェア」だと言う。ここでいうヒューマンウェアとは、市民が主体となって行う環境保全活動の知恵を指す。
 本書では、環境先進国の各自治体におけるヒューマンウェアの試みを紹介している。ある地域では、行政が再生可能エネルギーへの転換を推進する一方で、地域の建築関係者らが既存建物の高断熱化を進めており、相互作用がCO2削減に劇的な効果を与えたという。
 本書から市民の知恵なくして環境保全活動が達成されないことが分かる。と同時に、建築にかかわる我々がやらなくてはならないことが、数多く存在することを気付かせてくれる。

『新建築』(叶V建築社) 2007.8
 近年注目される温室効果ガスの削減は、地球規模で問題化する地球温暖化を食い止める対策のひとつである。2050年までに温室効果ガスの削減対策を行わないと、世界のGDPが20%減少するという提言を紹介し、日本での危機感が薄い現状を著者は指摘する。そんな社会的意識を変えるべく、本書ではヒューマンウェア(地域社会の市民や生活者が環境保全活動を具現化していく知恵)の観点で環境と向き合う社会のあり方を解説し、環境対策先進国のスウェーデン、デンマーク、ドイツの事例を、生活者のインタビューも交えて取り上げる。
(pika)