まちづくりデザインゲーム


はじめに

 誰でも自分のすまいやまちはこうあったらいい、こうなってほしいというイメージは持っています。住宅であれば、専門家に依頼しても自分でデザインして望みどおりのものが手に入れられるのが普通です。しかし、住むまちに関しては漠然とした希望はあっても、それを自らの手で実現できるとはなかなか思えないでいます。
  しかし、「まちづくり」においても、市民組織や地域社会が主体的に、行政や専門家と協力し、住民が自らの手でまちをデザインする可能性が出てきています。
 本書は、このような、まちを自らデザインし、まちを運営し、まちに働きかけようとする住民と専門家に向け、みんなでまちをデザインする方法を紹介した手引き書です。
 ここで紹介する「まちづくりデザインゲーム」は、私たちが十余年にわたり、まちづくりの現場で、住民、専門家、行政職員とともに試行錯誤を繰り返して作り上げてきたシステムです。ほぼ実用の域にまで達したと考え、これを公開し利用していただくためのマニュアルとして編集しました。
 例えば、商店街で個性的な町並みを整えながらゆったりと過ごせるスペースをデザインしたいとか、木造住宅密集地域で防災や日常の生活環境を整備するために、まちづくり協議会などで具体的なまちの将来像をデザインしたいとか、あるいは共同建替えを街区程度の範囲でみんなで考えてみたいとか、生活や活動の新しい像と具体的な空間像とをいっしょにイメージしデザインしようとしたとき、ここで紹介する「まちづくりデザインゲーム」は有力な武器になります。
 住民の方々がこの本を手にして興味を抱かれたら、行政や専門家に相談するとか、行政の担当の方ならまちづくりコンサルタントと相談して、この実施方法を考えてみるとか、していただければ幸いです。あるいは、専門家の方であれば、仲間といっしょにまちづくり団体と相談して課題地区で実施してみるなど、とにかく、実際に使っていただければ幸いです。
 決して難しいものではありませんが、それぞれの地域で課題に応じた様々な工夫は必要かも知れません。本書の最後の6章は、まちづくりデザインゲームを適用して持続的にまちづくりを展開している具体例を示していますので参考になると思います。
 最後になりましたが、このまちづくりデザインゲームの開発過程に参画してくださったまちづくり組織の皆様、行政関係者の方々、そして専門家の皆様に心から感謝いたします。また、編集段階で著者グループを叱咤しこのような本にまとめてくださった、学芸出版社の前田裕資様、デザインをご担当頂いた村角洋一様に心から感謝いたします。本書が、専門家と住民、行政とによる協働のまちづくりデザインを飛躍的に進め、より良いまちづくりのために貢献することを、願ってやみません。

執筆者代表 佐藤 滋
2005年2月