小規模区画整理のすすめ


はじめに

 我が国の都市は、古くから培った文化と歴史を継承しつつ、活力に満ちあふれた、豊かで快適な「世界に誇れる都市」として再生し、将来の世代に受け継ぐことが求められています。とりわけ、すでに相応のストックのある既成市街地、街なかの再生・再構築は焦眉の急とされています。
  今日、街なかには社会資本や建築物の老朽化をはじめ、中心市街地の空洞化、木造建築物の密集、低未利用地の散在等といった課題が山積しています。これらを同時に解決し、再生するためには点的、線的な施設を単発的に整備、更新するだけでは困難です。やはり、面的に各々の施設や個々の宅地を有機的に結びつけながら整備することのできる土地区画整理事業や市街地再開発事業等によることが効率的かつ効果的です。
  街なかは、これまでも地方公共団体が中心となって区画整理等により整備が進められてきましたが、財政危機が叫ばれる中、今後はそのスピードが徐々に鈍化するものと予想されます。このため、都市再生を実現する上で民間の資金やノウハウを積極的に活用することが大変重要となってきています。
  しかしながら、公共のそうした期待ほどには民間が主体的に区画整理等に取り組む例はあまり多くありません。その理由としては、一般の地権者の方や民間事業者にとって区画整理等は専門的な知識が必要で、しかも手続きが面倒であるという印象があったり、大規模で事業期間が長く、資金回収リスクが大きいので民間の事業には適さないといったイメージが定着していたりすることが大きいようです。
  実は、街なかで行う区画整理は大規模なものとは限りません。小規模であっても街なかの再生に有効であれば、活用されることに対して何ら拒む理由はないはずです。税制優遇等が認められている中で換地手法を使い土地を入れ替え、集約・整形化することにより、効果的に活用できる土地は多く、民間にとっても大変有効な手法と言えます。
  この本は、街なかで土地や建物を所有している地権者の方や民間事業者の方々が、敷地形状や接道条件が悪いなどの理由からこれまで有効に土地活用ができていないといった悩み等をお持ちの場合に、その一助となるよう街なかの小規模な区画整理のメリット、事例、手続きの方法などをとりまとめたものです。
  区画整理をまったく知らない初級者の方から、すでに相応の知識のある上級者の方までが、それぞれのレベルに応じて街なかの小規模な区画整理を理解し、実際に土地を活用できるように心がけています。

財団法人区画整理促進機構
   理事長 和田祐之