サイン環境のユニバーサルデザイン
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サイン環境のユニバーサルデザイン

計画・設計のための108の視点

書評



都市計画225

 本書は、サイン環境をバリアフリーデザインやユニバーサルデザインの観点からまとめた著書としては初めてである。幅広く高齢者・障害者の理解を深めながらユニバーサルデザインをサイン環境としてまとめた努力は評価したい。また数量的に扱いにくい部分を写真等で理解を深める工夫も本書の特徴である。以下に各章の内容の紹介とコメントをしめす。
 1章の「生活とサイン環境」ではサイン環境の現況と課題、サイン環境の基本概念、サイン環境の視点を示し、サインの枠組みや概念を示した。ここを読むことでサインの概念がある程度理解できる。

 2章の「人とサイン環境」では、高齢者・障害者の生理特性をベースにサイン環境の基本条件を整理した。この章から人とサインの関係を理解することが可能である。
 3章の「福祉のまちづくりとサイン環境」では福祉のまちづくりの条例や基準、バリアフリーデザインとユニバーサルデザインについて示した部分である。ここでは蓄積のあるバリアフリーの問題点を示しているが、蓄積が少ないユニバーサルデザインについては原則と現状を示すに止まっている。
 4章の「サイン環境の検証」では調査実験からサインの視認性、表示内容の欠落、高齢者の色の見え、サインの見やすい明るさ、点字ブロックの見えや敷設パターン等を示し、ピクトグラムや音声案内もユニバーサルデザインとして有用であることを示している。この領域は研究が浅く今後さらに研究の積み重ねが必要な部分である。
 5章の「わが国のサイン環境」では交通・施設サイン、シンボルマーク、ピクトグラム、福祉のまちづくりのマーク、視覚障害者に関連した点字・触地図・点字ブロック・音声信号等や、聴覚障害者に関連した磁気ループ・電光表示板・非常警報・避難誘導装置等を対象にして、その現状、成果、問題点、課題を整理している。総合的に幅広く捕らえたことは評価できるが、他方でわが国のサイン環境の体系化の遅れを示したとも言えよう。
 6章の「福祉先進国のサイン環境」では欧米の先進事例と考えられる事例を写真によって示した。これらは分かりやすい事例を示したが、欧米のサイン環境の体系的な提示までは示されていない。
 7章のこれからのサイン計画では、分かりやすさ、幅広い対応、安全性、親しみやすさ、美しさの5点に要約し、具体的事例を示しながら説いている。ここに著者のまとめの工夫がみられる。
(紹介:東京都立大学 秋山 哲男)



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