有名建築事典

有名建築事典 イラスト&解説500
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内容紹介

試験から設計、建築巡りまで使える必修知識

建築士試験の分析や学会賞受賞作、世界遺産や国宝を含む建築史上の重要作品などから、建築を学ぶ人が必ず知っておきたい「有名」500作品を厳選。気鋭の執筆陣による簡潔でコアな解説と特徴を捉えた手描きイラストで、設計のヒント、試験対策、建築巡りに大重宝。学生・実務者から建築ファンまで誰もが使える必携の事典!


種田元晴 編著、江本弘・岡北一孝・落合正行・勝原基貴・関村啓太・中山佳子・松尾智恵・光永威彦 著、野村彰 イラスト

1つ1つ手描きのイラストと、何度も推敲を重ねた本文。作品選定からレイアウト、盛り込む情報の細部まで議論を尽くし、隅々までこだわる著者たちの熱意と工夫がぎっしり詰まった、手元に置いておきたい1冊になりました。
編集担当K
編集担当K
体裁四六判・320頁
定価本体2500円+税
発行日2025-06-10
装丁加藤賢策(LABORATORIES)
ISBN9784761529338
GCODE2351
販売状況 在庫◎
ジャンル 建築一般
目次著者紹介まえがきあとがきレクチャー動画関連イベント関連ニュース

第1章:神殿/教会堂/モスク
第2章:寺院/神社/茶室
第3章:宮殿/城郭
第4章:戸建住宅(邸宅・民家・都市住宅・別荘)
第5章:集合住宅
第6章:教育施設
第7章:医療施設
第8章:博物館/美術館
第9章:音楽堂/劇場
第10章:図書館/公民館
第11章:商業施設
第12章:集会施設
第13章:宿泊施設
第14章:官庁施設
第15章:生産施設(オフィス・研究施設・工場)
第16章:運動施設
第17章:交通施設(駅舎・空港・船着場)
第18章:広場/公園/工作物/パヴィリオン
第19章:集落/まちづくり/エリアデザイン/パブリックスペース

所在地マップ(世界・日本)
索引(作品名/人物・設計組織名/用語)
有名建築の理解を深める次の100冊
あとがき

【コラム】
西洋建築史と有名建築
日本の建築文化と有名建築
建築家の受賞作と有名建築
建築士の教養と有名建築
建築資料と有名建築
与条件と有名建築
環境配慮と有名建築
構造と有名建築
建築家の職能と有名建築

●編著者

種田元晴(たねだ・もとはる)

文化学園大学造形学部建築・インテリア学科准教授、日本大学芸術学部デザイン学科非常勤講師。博士(工学)、一級建築士。専門は日本近現代建築史・意匠論、建築設計。1982年生まれ。法政大学大学院工学研究科博士後期課程修了。種田建築研究所、東洋大学助手などを経て、2019年より現職。2022年~メドウアーキテクツパートナー。著書に『立原道造の夢みた建築』(単著/鹿島出版会、2016)、『世界建築史15講』(共著/彰国社、2019)、『建築のカタチ』(共著/丸善、2020)、『日本の図書館建築』(共著/勉誠出版、2021)、『建築思想図鑑』(共著/学芸出版社、2023)、『はてしなき現代住居』(共著/フィルムアート社、2024)など。2017年日本建築学会奨励賞受賞。

●著者

江本弘(えもと・ひろし)

明石工業高等専門学校建築学科准教授、博士(工学)、一級建築士。専門は近現代建築史。1984年生まれ。東京大学大学院工学系研究科建築学専攻修了。著書に『歴史の建設:アメリカ近代建築論壇とラスキン受容』(東京大学出版会、2019)、共著に『建築をあたらしくする言葉』(TOTO出版、2024)、監訳書にR. M. ヴォイチュツケ『未完の美術館:調和にむかって─ル・コルビュジエの建築思想と国立西洋美術館』(Echelle-1、2023)など。第8回東京大学南原繁記念出版賞(2018)を経て、2022年、『歴史の建設』で日本建築学会著作賞受賞。

岡北一孝(おかきた・いっこう)

岡山県立大学デザイン学部建築学科准教授、博士(学術)、一級建築士。専門は西洋建築史。1981年生まれ。京都工芸繊維大学大学院工芸科学研究科造形科学専攻修了、日本学術振興会特別研究員PD(大阪大学)、京都美術工芸大学建築学科教員を経て、2022年より現職。共著書に『ブラマンテ:盛期ルネサンス建築の構築者』(NTT出版、2014)、『古典主義再考I 西洋美術史における「古典」の創出』(中央公論美術出版、2020)など。

落合正行(おちあい・まさゆき)

日本大学理工学部まちづくり工学科准教授、博士(工学)、一級建築士。専門は建築計画、建築設計、空間デザイン。1980年生まれ。日本大学大学院理工学研究科博士前期課程建築学専攻修了後、株式会社山中新太郎建築設計事務所勤務、2011年PEA…/落合建築設計事務所設立。2014年より現職。設計作品に「ワカミヤハイツ あだち農まちプロジェクト」「上池台の住宅 いけのうえのスタンド」「富士山・白糸ノ滝テラス SHIRAITO GENERALSTORE」など。主な受賞に、2017年日本建築学会作品選集新人賞、グッドデザイン賞2018・ベスト100、2021年日本建築士会連合会 第1回建築作品賞 奨励賞・U40建築賞など。

勝原基貴(かつはら・もとき)

金沢工業大学建築学部講師、博士(工学)、一級建築士。専門は日本近代建築史。1984年東京生まれ。日本大学大学院理工学研究科建築学専攻博士後期課程修了、日本大学理工学研究所、文化庁国立近現代建築資料館、千葉大学特任研究員を経て現職。著書に『分離派建築会:日本のモダニズム建築誕生』(京都大学出版会、2020)、『クリティカル・ワード 現代建築』(フィルムアート社、2022)など。論文に『大正・昭和戦前期における岸田日出刀の近代建築理念に関する研究』(博士論文、2016)など。

関村啓太(せきむら・けいた)

読売理工医療福祉専門学校専任講師、京都橘大学工学部建築デザイン学科非常勤講師、修士(工学)、一級建築士。専門は建築史・都市史。1982年生まれ。東京大学大学院工学系研究科建築学専攻修了、民間企業勤務等を経て現職。著書に、『図解建築計画の知識』(共著/オーム社、2020)、『住まいの百科事典』(共著/日本家政学会編、丸善出版、2021)、連載「測量史と建築文化」(『測量』、日本測量協会、2023~25)。

中山佳子(なかやま・よしこ)

株式会社中山佳子設計企画 代表取締役、日本大学理工学部建築学科非常勤講師。一級建築士。「プロジェクトデザインで共感を空間化する」をコンセプトに、建築、都市、グラフィックまで領域横断的な空間デザインを手掛ける。1987年生まれ。横浜国立大学大学院建築・都市スクールY-GSA修了、山本理顕賞(専攻首席)。株式会社日本設計を経て現職。著書に『多拠点で働く─建築・まちづくりのこれから─』(ユウブックス、2023)など。設計作品に「INOKASHIRA2.0(まちと公園を纏う家)」「バスターミナル東京八重洲 第1期エリア」等。主な受賞に、ドイツ・iFデザインアワード、日本建築学会作品選集、JIA優秀建築選、日本空間デザイン賞銅賞、グッドデザイン賞、他多数。

松尾智恵(まつお・ちえ)

明星大学建築学部建築学科准教授、たにおか設計社 代表取締役。一級建築士、構造設計一級建築士、修士(理学)。専門は、建築構造(構造設計、構造デザイン、空間構造、構造最適化)。1978年生まれ。法政大学工学部建築学科卒業。シュツットガルト大学大学院修了(ドイツ)。川口衞構造設計事務所を経て現職。共著に『構造設計を仕事にする』(学芸出版社、2019)、『日本の構造デザインガイドブック』(建築技術、2023)など。

光永威彦(みつなが・たけひこ)

明治大学理工学部建築学科准教授、博士(工学)、一級建築士、設備設計一級建築士、技術士(衛生工学部門)。専門は建築設備・給排水衛生設備。1983年生まれ。明治大学大学院建築都市学専攻修了。株式会社山下設計を経て現職。共著に『建築を変える 拡張排水システムの設計法』(彰国社、2022)など。設備設計作品「長崎市新庁舎(延べ床面積50,000㎡超の大規模庁舎で初のZEB Ready取得)」他多数。

●イラスト

野村彰(のむら・あきら)

1958年生まれ。京都工芸繊維大学工芸学部住環境学科卒業。一級建築士。イラスト担当書に『カラー版 図説 建築の歴史』『図解ニッポン住宅建築』『図説 やさしい構造力学』(いずれも学芸出版社)などがある。

本書は、世界中のあらゆる時代に存在する(した)数多の有名な建築の中から500作品を選りすぐって集めた事典である。建築を学ぶ人、つくる人、そして、味わいたい人に向けて、これだけは知っておいてほしいというよく知られた建築について、300字程の短い説明と1カットのイラストのみで簡潔に紹介している。
いきなりだけれど、ここで強調しておきたいのは、本書はあくまでも「有名建築」を紹介するものであって、「名建築」のベスト500を紹介するものではない、ということである。名建築かどうかは、その建築を使う人や訪れる人それぞれが主観的に優れていると感じるかどうかで決まる。一方の有名建築かどうかは、いかに多くの人にその建築の価値が発信され、認知され、共有されたかという客観的な知名度によって判断される。「有名建築」は指標を設定すればその有名度合いを計れるけれど、「名建築」の度合いは決して計ることはできない。あるいは、私にとっての「名建築」(=推し)はもちろんあり得るが、私にとっての「有名建築」というものはあり得ない。そして、「有名建築」ではない「名建築」は無数にあるが、「名建築」でない「有名建築」はほとんどないはずである。このように、「有名建築」と「名建築」は似ているようでかなりちがう。
つまり、本書は、著者各自の「推し」を寄せ集めたものではなく、建築士試験で出題されたもの、国内外の主要な賞を受賞しているもの、雑誌やテレビなどのメディアで取り上げられたもの、世界遺産や文化財、国宝に指定されているものなどを著者一同が手分けして調査し、議論を尽くしたうえで集成した知名度の高い建築の作品集である。ただし、誰が選んでもこうなる、という精選をするのは極めて難しい。そもそも、有名かどうかは社会、時代によっても異なるものである。本書では、異なる専門性を有する複数の著者が、先の客観的な基準に照らして、現代の日本において建築を学び・つくり・味わううえで有名だと判断できるものを選ぶことにした。ただし結果として、「有名建築」として選んだ本書の500作品は、著者らにとってはすべて「名建築」でももちろんあるということも申し添えておきたい。
本書では、建築の初学者にもわかりやすいよう、なるべく平易な言葉と端的なイラストで各作品の概要が伝わるように努めている。専門用語を用いる場合には極力解説を補い、読みづらい用語や固有名詞にはなるべくルビを振り、本書中の関連作品への参照も丁寧に示した。またリード文は、その文面から作品名を当てるクイズにも活用できるよう、本文中の主要キーワードを盛り込んだ。イラストは、本文とも照らしてその作品を最もよく表すように検討し、メリハリのある一貫したテイストで、読者の印象に残るよう描かれた。
加えて、建築士試験に挑む方にも役立つように、過去の一級、二級建築士で出題された作品にマークをつけている。また、ガイドブックとしても活用できるよう、世界遺産、国宝、重文などに登録されている作品にマークをつけるとともに、国・都道府県を一覧するマップも載せた。キーワードや人名索引も充実させて辞書的に使えるようにも整えた。また本書をきっかけにより深く各作品について知りたいという方に向けて、次に読むべきオススメの本のリストも巻末につけた。そして、そもそも「有名建築」とはなにかを考えるきっかけとなるように、著者各自の多様な視点から有名建築を論じたコラムも挟んである。
さまざまな使い方ができるように工夫を凝らしたので、ぜひ、著者一同の想定を超える使い方を発見して、建築を楽しむための一助としていただきたい。

本書の企画は、2021年12月に編集者・神谷彬大さんが編者を訪ねてこられ、「なにか面白い本をつくりませんか」という問いを投げかけられたことからはじまった。ちょうど建築設計の授業後だったこともあって、「設計のヒントとして参照してほしい有名な建築が一覧できる本があったらいいな、ついでに建築士試験の勉強にも役立って、さらにはそれがガイドブックにもなるような本ができたらいいですよね」という欲張りなアイデアが出てきたのだった。「それはいいですね」と即答の神谷さん。出版社からのGOサインをすぐさま取り付けてくれて、イラストは学芸出版社の書籍で実績のある野村彰さんに膨大な数を描いていただけることになった。
それから、同様に膨大な数の解説を書いてくれる仲間探しがはじまった。西洋建築史、日本建築史、近代建築史、建築計画、意匠設計、構造設計、設備設計、都市デザインなど専門の異なる同年代の若手研究者・実務家が声がけに応じてくれて、執筆体制が固まった。
執筆者は各自の専門性に加えて、全員が一級建築士の資格を持ち(=幅広く建築の常識を心得ている)、建築系の大学・高専・専門学校での教育経験を有している(=初学者のニーズを把握している)のが我々の強み。せっかくの執筆メンバーなので、編者のわがままな方針を押し付けるのではなく、月に一度はオンラインで集まって、なるべく全員で密に議論し、有名建築とはなにかをじっくり考える機会を多く持つこととした。
そうして、まえがきにも触れた通り、なるべく客観的な指標に基づいて慎重に500作品を選び抜き、各自が書いた原稿を相互に何度も読み合わせ、初学者が読んでわかるかどうか、少ない文字数の中にしっかり大事な情報を盛り込んでいるか、所在地のバラつきは避けられないにしても作家や時代に過度な偏りがないか、多様な読者層にうれしい構成となっているかなどを推敲し続け、気づけば3年半の月日が流れていった。じっくり時間をかけた分、我々の魂が濃密に込められたものと信じている。
その間、根気よく著者一同の議論を整理し続けてくださった神谷さんには心から御礼を申し上げたい。編者からの度重なる無礼な改稿指示に真摯に応えてくださった著者各位にも感謝したい。とりわけ、建築士試験の出題回数を悉皆調査し、至らぬ編者を多大にサポートしてくださった江本弘さんの存在なくして本書は完成しなかった。そして、執筆陣からのリクエストにも応えつつ、1枚1枚の表現を工夫され、味のある手描きイラストを迅速に仕上げてくださった野村さんに深謝申し上げる。LABORATORIESの加藤賢策さんには、読みやすく、手に取りたくなる素晴らしいデザインをしていただいた。
最善を尽くしたものの本書にもしも不備があるとすれば、それはひとえに編者の責任である。建築が好きでたまらない方々が一人でも多くこの本を楽しんでくださることを、心から願っている。

2025年6月
大阪・関西万博開催を横目に
建築文化の盛り上がりを祈りつつ
種田元晴

開催が決まり次第、お知らせします。

メディア掲載情報

公開され次第、お伝えします。