サステイナブル・コミュニティ

あとがき



 世界を歩いていてヨーロッパの町づくりに感嘆することが多い。 歴史と伝統にあふれ人びとが息づく町は美しい。 アジアの町をみるとき、 その猥雑で活気あふれる町にはアジアの息吹を感じるが、 無秩序で雑然とした町づくりにはいつも疑問を感じていた。 裸一貫アメリカに渡ってきて功なり名遂げたロサンゼルス在住の中国人が、 彼の生涯を感動をこめて語ってくれた。 そのとき“東洋人はセルフィシュだ。 われわれ東洋人はアメリカ人からもっと学ばなければならない”と言っていたのが強く記憶に焼き付いている。 このことが町づくりにも影響しているように思えて気にかかる。 アメリカの町は一般にダウンタウンはどこにいっても同じパターンで、 厚みがなく平板だ。 しかし生活の場は豊かだ。 豊かな町づくりは天下一品である。 アメリカの豊かさに包まれながら彼らの町づくりに対する考え方に関心が向いた。
 ロサンゼルスに住み初めて一年が過ぎた九二年、 UCLAの都市工学の博士課程に通うキム・マツナガ女史と邂逅した。 彼女は、 エッジシティ、 ネオ・クラシカル、 そしてサステイナブル・コミュニティと変遷するアメリカの町づくりについて調査の端緒を開いてくれた。
 本書は、 アメリカで発想されたサステイナブル・コミュニティの考え方を日本に紹介するものだ。 そして、 二一世紀のわが国の新しい都市像・コミュニティ像に思いを巡らせたとき、 このコンセプトが役に立つと考え、 都市工学に詳しいフジタリサーチ社(米国法人)の川村健一社長と、 ともに調べ、 ともに書き下ろしたものだ。 日本劣化が真実味を帯びてきた昨今、 著者の思い入れのため筆が走ってしまっているところがあるが、 ご容赦を願いたい。
 なお、 本書作成に当たっては、 基礎的な調査や情報収集に情熱を傾けてくれたキム・マツナガ女史、 倉園茂樹君(現在鹿児島県庁勤務)、 木村健一君(フジタリサーチ社勤務)に心より感謝の意を表するものである。 また、 日本開発銀行設備投資研究所の石神隆主任研究員には、 貴重なご意見をいただくなどたいへんお世話になった。 療養中のマツナガ女史に代わって日本開発銀行ロサンゼルス事務所のリーン・ナカヤマ嬢が写真の収集と整理をボランティアで行なってくれた。 御両名にも厚く御礼申し上げる。

九五年九月
二人を代表して 東京世田谷にて 小門 弘幸

学芸出版社『サステイナブル・コミュニテイ』より
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サステイナブル・コミュニテイ実現のための呼び掛け
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