英国都市計画とマスタープラン
英国都市計画用語集
アフォーダブル住宅
Affordable Housing
市場価格の住宅を獲得するのに十分な収入を持たない人のための住宅。
インスペクター
Planning Inspector
環境省の付属機関である計画審査庁(Planning Inspectorate)に所属する都市農村計画の専門家。デベロップメントプランの公開審問会、不服申し立て審査、計画是正における審議が主な職務内容となっている。身分的には中央政府の職員であるが、政府の政策からは独立して、専門家としての判断を行う。
改造
Conversion
一般に、建築物の内部利用形態を変更すること。1つのユニットを2つ以上に分割する場合、用途を転換する場合などを指す。
開発
Development
開発規制の対象となる行為で、都市農村計画法によって、(1)地中、地表、地上もしくは地下における建築、土木、採鉱その他の工事の実施(operational developmentと呼ばれる)、または(2)建物その他の土地の用途の重大な変更(change of useと呼ばれる)のいずれかと定義されている。
開発規制
Development Control
全ての開発行為に対して、自治体が許可、条件付き許可、不許可により開発を規制する仕組み。
カウンティ
County Councils
2層制の地方制度を採用する地域における上位の自治体で、ストラクチャープランの策定義務がある。イングランドの非大都市圏に存在し、我が国で言う県に相当する。
環境省
Department of the Environment: DoE
都市農村計画、地方自治などを所管する中央官庁。1997年6月に交通省と統合され、現在では環境・交通・地方省(Department of the Environment, Transport and the Regions)となっている。
環境大臣
Secretary of State for the Environment
閣僚の1人で、環境省を所管する大臣。
強制介入
Call in
地方計画庁が行う都市農村計画に対して、環境大臣が強制的に介入すること。デベロップメントプランの策定、計画許可審査などでこの権限が環境大臣に留保されているが、その行使は中央政府の介入が極めて正しいと判断される場合に限られる。
居住室
Habitable Room
住宅の中で浴室、洗面所を除いた部屋のこと。
グリーンベルト
Green Belt
大都市の市街地拡大の阻止を主要目的として指定されており、イングランドに14箇所存在する。グリーンベルトが一度決められると、その境界線の変更は通常行われないし、グリーンベルト内では原則として新規建築物は許可されない。
グレーター・ロンドン・カウンシル
Greater London Council: GLC
ロンドン地域の広域自治体。1986年に廃止された。
計画協定
Planning Agreement
自治体が開発申請者との間で、開発行為の内容について合意に基づき締結する協定のこと。一般に、地域コミュニティに必要な特定の公共・公益施設を実現するために用いられる。1990年都市農村計画法106条に規定された手法であり、106条協定(section 106 agreement)とも呼ばれる。
計画許可
Planning Permission
全ての開発行為が必要とする地方計画庁からの許可のこと。
計画方針ガイダンス
Planing Policy Guidance Notes: PPG
中央政府から出される都市農村計画に関する基本方針。都市農村計画のテーマ別に24のPPGが発行されている。
公開審問会
Local Public Inquiry
ローカルプラン、UDPの策定の際に、縦覧案の内容について反対意見を表明した者と自治体の間で意見の折り合いがつかない場合、その審議を目的として行われる手続き。審問官として任命された計画審査庁所属のインスペクターによって進行され、審問官は全ての反対意見について、意見提出者、自治体の両者の意見を聞いた上で、最終的な判断を勧告という形で下す。
公開討議
Examination in Public
ストラクチャープランの策定過程で行われる公聴会で、ローカルプラン、UDP策定時における公開審問会に相当する。公開審問会と異なり、公聴会の議題、意見陳述人は自治体が指定し、案に対して反対の多かった政策の是非を中心に議論が行なわれる。
広告規制
Advertisement Control
街路の安全性確保および街路環境の向上を目的として、看板など屋外の広告物を規制する制度。一定の条件を満たすもの以外の広告物は、自治体からの広告物許可が必要となる。
交通省
Department of Transport: DoT
運輸・交通行政を所管する中央官庁。1997年6月に環境省と統合され、現在では環境・交通・地方省(Department of the Environment, Transport and the Regions)となっている。
サープラン
The London and South East Regional Planning Conference: SERPLAN
イングランド南東部地方の自治体が、広域都市計画方針を共有する目的で設立したNPO組織。
シティ
City of London
ロンドンの金融街を構成する1平方マイルの区域。ロンドンの歴史的中心であり、この区域については、シティ自治体(Corporation of London)に対して特別な自治権が与えられている。
指定建造物
Listed Building
建築的、歴史的な重要性が認識されるとして、国民遺産省(Department of National Heritage)が指定した建造物。指定建造物となると、その改変には、通常の計画許可に加え、指定建造物許可(listed building consent)が必要となる。
住宅協会
Housing Associations
民間非営利の住宅供給団体で、現在の社会住宅建設の担い手と位置づけられている。補助金の大半は、中央政府から住宅公庫(Housing Corporation)を通して獲得している。
ストラクチャープラン
Structure Plan
イングランドの非大都市圏において、カウンティが策定するデベロップメントプラン。長期、広域、戦略的であり、ローカルプランに対する計画枠組みを提供する。その形式は、計画書とキー・ダイアグラム(key diagram)からなる。
ストラテジック・ビュー
Strategic View
国家的見地から重要な眺望景観を保護する仕組み。現在、ロンドンのセント・ポール大聖堂および国会議事堂に対する10の眺望が指定されている。
政府ロンドン局
Government Office for London
1994年4月に、それまで別々に置かれていた環境省、通商産業省、教育省、雇用省、交通省の地方事務所を統合し、各地方に一つずつ設置された中央政府の地方事務所のうち、ロンドン地域を管轄する事務所。
大ロンドン計画
Greater London Development Plan
1976年にGLCによって策定された計画で、ロンドン地域のストラクチャープランにあたるもの。
単一自治体
Unitary Authority
一層制の地方制度を採用する地域における自治体。イングランドの大都市圏の全部と非大都市圏の一部、ウエールズ、スコットランドの全部の地域に存在する。イングランドおよびウェールズでは、ほとんどの場合、ユニタリー・デベロップメントプランの策定義務がある。
地域方針ガイダンス
Regional Planning Guidance Notes: RPG
中央政府から出される都市農村計画の地方別ガイドライン。今後20年の地方の広域的開発フレームの設定、住宅建設のフロー、環境、交通、インフラ整備、経済開発、農業、鉱業、清掃・廃棄物等の計画方針が、13地方について明記されている。
地方計画庁
Local Planning Authority
都市農村計画法によって、計画権限の全部または一部を与えられた機関。一般的には地方自治体を指す。
ディストリクト
District Councils
2層制の地方制度を採用する地域における下位の自治体で、ローカルプランの策定義務がある。イングランドの非大都市圏に存在し、我が国で言う市町村に相当する。
デポジット
Deposit
デベロップメントプラン策定プロセスの一段階であり、案の正式縦覧を指す。
白書
White Paper
中央政府が政策の変更を意図して発行する文書。法制度の改正を前提とした提案であることが多い。
不適格住宅
Unfit Dwelling
修繕、安全性、湿気、採光、換気、給水、排水及び衛生設備、食糧の貯蔵と調理及び排水処理のための施設、内部レイアウトで問題のある住宅。
不服申し立て
Appeal
一般に行政による判断が不服の場合、その行政を所管する大臣に直接再審査を請求することができることを定めた制度のことを言う。都市農村計画制度では、ほとんどの地方計画庁による行政判断に対して、環境大臣への不服申し立てが認められているが、最も典型的な不服申し立てとしては、計画許可申請者が自治体の判断に不服の場合、環境大臣に直接審査を請求する場合がある。
プランニング・ブライト
Planning Blight
例えば道路の新設提案など、公共が都市計画の目的で提案した結果が、その対象となっている土地の資産価値を下落させる現象のこと。
プランニング・ブリーフ
Planning Brief
特定の敷地について自治体が望ましい開発内容を具体的に提示したガイドライン。
プロット・レシオ
Plot ratio
容積率のこと。
保全区域
Conservation Area
建築的、歴史的、または景観的に地域としての固有の価値を有すると認められる区域で、自治体が指定する。保全区域内では自治体による開発規制権限が強化される。
ユニタリー・デベロップメントプラン
Unitary Development Plan: UDP
大ロンドンと6つの大都市圏の自治体、およびウエールズの全ての自治体によって策定されるデベロップメントプラン。2部構成で、ストラクチャープランに代わる内容がプランの1部に、ローカルプランに対応する個別方針がプランの2部に入っている。プランの形式はローカルプランに同じ。
ローカルプラン
Local Plan
イングランドの非大都市圏において、下位自治体であるディストリクトが策定するデベロップメントプラン。計画書(written statements)とプロポーザル・マップ(proposal map)から構成される。
ロンドン計画諮問委員会
London Planning Advisory Committee: LPAC
ロンドン地域を構成する32の特別区とシティ・オブ・ロンドンの代表で構成され、環境大臣にロンドンの環境、都市計画について勧告を行う法定団体。1985年11月に設立された。
ロンドン・バラ
London Boroughs
ロンドン特別区のこと。32あり、シティ(City of London)とともにロンドン地域を構成する。
中井検裕/NAKAI Norihiro
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