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景観まちづくり・サブキーワード

都市のイメージ

 '60年、ケヴィン・リンチの著作The Image of the Cityの邦訳(丹下健三、富田玲子訳、岩波書店、'68年)。都市は人々によってイメージされるものであると捉え、イメージされ易さをイメージアビリティと呼び、イメージアビリティを高めることが美しく楽しい都市の要件としている。これ以後都市景観に対する認識、社会的要求が高まることとなった。

遠景・中景・近景・接景

 それぞれ風景の距離を表す言葉である。接景は最近使われるようになった。これらは特に明確な定義がなく、身近な所から遠い所まで概念的に使われているが以下のような分け方がある。

遠景〉 1本1本の樹木のアウトラインは必要ではなく、稜線や地形のアウトラインなどや、空を背景にしたスカイラインが視覚の対象となる。距離の目安として、広葉樹では約6.6km以上、針葉樹では約3.3〜4.4km以上と言われている。

中景〉 1本1本の樹木のアウトラインは必要とされるが、樹木のディテールまでは必要ではなく、地形などの構成要素の関係が視覚の対象となり、一般的にランドスケープの主景となる。距離的には遠景と近景の中間となる。

近景〉 1本1本の樹木の葉、幹、枝ぶりなどが意味を持つ距離で、1本1本の樹木の姿、形が視覚の対象となり、一般的にその対象と一体感を持つことができる。距離の目安として広葉樹では約360m以下、針葉樹では約180〜240m以下と言われている。

接景〉 近景よりも近く、手の触れる距離で、道路本体や付属物、植栽、ストリートファニチャーなどが対象となる。

借景

 造園技法の一つで、庭園外にある風景などの要素を全体の景の構成要素の部分として構成する方法であり、伝統的な造園技法である。借景の対象となるものは、山、海、建築物、田園など様々である。修学院離宮の庭園の借景が有名である。

夜間景観

 都市における歴史的建造物や橋梁やランドマーク的な建築物などを対象として夜間にライトアップするようになってきて以来、都市の夜間景観がクローズアップされるようになってきた。

通りの街路樹のライトアップ、ネオンサインや看板の計画など、都市の夜間景観の形成が実現されつつある。

景観条例

 都道府県単位や市町村単位で、良好な都市景観の形成を図るために景観条例を制定する自治体が増えてきている。

景観整備を図ることを目的とするものや、自然環境の良好な市町村が、乱開発から自然環境を守ることを目的とするものもある。後者の例として、真鶴町のまちづくり条例では、開発業者のプランに対して、議会で否決することもできるとしている。

美の基準

 真鶴町のデザインコードのことである。英国のチャールズ皇太子の著書『英国の未来像−建築に関する考察』(出口保夫訳、東京書籍、'91年)の中の「建築の10の原則」をヒントにつくられた。

 「場所」「格づけ」「尺度」「調和」「材料」「装飾と芸術」「コミュニティ」「眺め」の八つの基準を骨格として、キーワードを定め、前提条件、解決法などの解説に、イラストや写真などを加えた詩的なデザインコードである。

都市景観の日

 建設省は'90年度より、都市景観に対する市民の意識の啓発を図るために、10月4日を「都市景観の日」と定め各種の行事を広く展開している。

 特に'91年度からは、「都市景観大賞」を設け、都市の美観に対する市民の意識の啓発を図っている。

景観賞

 景観啓発事業の一つで、優れた景観形成に寄与した建築や町並みを表彰する顕彰制度である。最近多くの自治体で実施されるようになってきた。各年度毎の建築作品などを対象に表彰している例が多い。

○○百景

 近年多くの自治体で実施されるようになってきた景観啓発事業の一つで、優れた風景や史跡、名勝、建築物、橋梁などを、その土地の優れた景として100景選定する事業である。住民からの公募も加え決める例が多く、住民参加の景観づくりに寄与している。自治体によっては100選にこだわらず30選のように選定する自治体もある。

景観整備事業

 建設省では、'93年より街並み環境整備事業を実施した。この事業は対象範囲が広く、多くの自治体で利用されている。他に、街並み・まちづくり総合支援事業があるが、景観に対する国の整備事業はまだまだ充実しているとは言えない。また地区計画では街並み誘導型地区計画(→5)ができ、今後の展開が期待されている。

景観アドバイザー

 良好な景観形成のため、各種事業や計画に景観面でのアドバイスをするために、景観アドバイザー制度を設け、景観アドバイザーを設置する自治体が増えてきている。ガイドラインを推進するのに重要な役割を果たしている。

マスターアーキテクト

 大規模開発や複数の計画を一度に進める場合に、全体のデザインを総合的にまとめるために、複数の建築家間の調整をとる者を言う。大規模な計画が複数の建築家で行われる例が出ており、その方法等において今後の展開が期待されている。

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