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はしがき

 

 都市計画・まちづくりの講義は、 これまで大学の建築・土木・造園などの建設系の学科では必須科目となってきた。 さまざまな建築物の設計や都市施設の建設さらに公園緑地の整備などにたずさわる専門家たちにとって、 都市計画についてのはば広い知識や技術が素養として求められてきたのである。

 しかしながら20世紀後半の都市計画の仕事は、 上のような建設系の専門を中核としながらも、 きわめて多様な分野との協同作業ですすめられるようになった。 ひとつの都市開発プロジェクトを起こすときでも、 健康、 衛生、 環境、 自然などの生活環境、 コミュニティ、 福祉、 教育文化、 芸術といった社会環境、 雇用、 産業、 財政、 投資といった経済環境、 住民参加、 情報公開、 分権、 法制度などの政治環境など多分野との連携が常に求められる。

 それだけに今日、 これら多分野の専門家にとっても、 市民・ボランティアにとっても、 共通に用いられる都市計画テキストが求められているといえよう。

 本書は、 こうしたニーズに応えようと、 京都大学で「都市設計学(全学共通講義)」を担当してきた著者が、 最近の内容を中心に図表や事項を大幅に加えて、 学習テキストとしてまとめ直したものである。 内容では、 社会実践としての都市計画といういとなみの基本的な仕組みを論述するとともに、 平行して都市政策・まちづくりにかかわる近年の思潮や計画技法についても紹介しているので、 専門家や実務者のための事典としても役立つことと思う。

 いうまでもなく都市計画という本来からして多分野的総合の世界の紹介は、 著者単独でできることではない。 執筆にあたっては、 多くの関連分野の専門家の成果および政府・自治体等の資料を引用させていただいた。 また、 各地のまちづくり運動からも新しい発想を学ばせていただいた。 かならずしも準備万全でなかった毎回の講義を通して学生諸君からも逆に教えられることも少なくなかった。 さらに友人諸君には原稿を点検し補正する手間をお掛けした。 これらのことを記して感謝の意を表するものである。

1996年11月

著者

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三村浩史『地域共生の都市計画』

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