パーパスモデル


吉備友理恵・近藤哲朗 著

内容紹介

利益拡大の競争から、社会的な価値の共創へ

プロジェクトの現場で、多様な人を巻き込みたい/みんなを動機づける目的を立てたい/活動を成長させたい時に使えるツール「パーパスモデル」。国内外の共創事例をこのモデルで分析し、利益拡大の競争から、社会的な価値の共創への転換を解説。共創とは何か?どのように共創するか?共創で何ができるか?に答える待望の書。

体 裁 A5・208頁・定価 本体2300円+税
ISBN 978-4-7615-2825-6
発行日 2022-08-15
デザイン協力 LABORATORIES


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目次 1

目次 2

目次 3

終了済みのイベント

はじめに―誰もが“共創”に向かう時代

1章 パーパスモデルとは何か

1-1 パーパスモデルとは何か

1-2 パーパスモデルの見方

1-3 パーパスモデルのつくり方

1-4 なぜパーパスモデルをつくったか

1-5 どんなときにパーパスモデルを使えるか

2章 パーパスモデルで見る共創プロジェクト

2-1 共創の8つのタイプ

1.事業をつくる
2.基準をつくる
3.共通認識をつくる
4.関係をつくる
5.場をつくる
6.共同体をつくる
7.人を育てる
8.公共を開く

2-2 共創プロジェクトの事例紹介

01 スクリレ
学校と保護者の連絡手段をデジタル化するサービス
02 LEO Innovation Lab
デジタルテクノロジーでヘルスケア分野のイノベーションを加速させるラボ
03 BRING
服の回収からリサイクル、再生素材を使った洋服の販売までを行うブランド
04 Regenerative Organic Certified
世界最高水準の包括的なリジェネラティブ・オーガニック認証制度
05 B Corp
環境や社会に配慮した「良い企業」を認証する制度
06 宗像国際環境会議
世界遺産を舞台に海洋環境の保全と発信に取り組むコンソーシアム
07 瀬戸内国際芸術祭
美しい島々を拠点に、アートによる交流で地域の活力を取り戻すイベント
08 Fashion for Good
ファッション産業のサステナビリティ向上を図るプラットフォーム
09 BLOXHUB
産官学民で都市化の課題を解決するイノベーションハブ
10 BONUS TRACK
小田急線地下化で生まれた空地を活用した新しい商店街
11 De Ceuvel
循環型の都市を目指す実験のショーケース
12 PoliPoli
政治家に声を届ける政策共創プラットフォーム
13 High Line
2人の青年が仕掛けたムーブメントが多くの共感を呼んで実現した空中公園
14 Forest Green Rovers
世界で最も環境に配慮したサッカークラブ
15 Waag
デジタルテクノロジーの民主化を目指す市民主導のソーシャルイノベーションラボ
16 Dutch Skies
市民が生活環境(大気汚染)の状態を可視化するシティズン・センシング
17 Dove Self-Esteem Project
自己肯定感を高める教育プログラムを提供するプロジェクト
18 東京都新型コロナウイルス感染症対策サイト
日々変化する感染状況を都民に早く正確に届ける情報サイト
19 ミーツ・ザ・福祉
障がいのある人もない人も一緒につくる、いろんな「違い」に出会うフェス

3章 より良い共創を実現するためのポイント

3-1 共通目的をどう考えるか?

1.その共通目的、独りよがりになっていませんか?
2.共通目的の前に、共通課題を深掘りできていますか?
3.共通目的を具体的に言葉にできていますか?

3-2 誰をどう巻き込むか?

1.誰が共創パートナーかしっかり意識できていますか?
2.異なる属性のステークホルダーと一緒に取り組んでいますか?
3.本来関わるべき人を排除していませんか?
4.全員に同じだけの想いと関わりを求めていませんか?
5.巻き込む相手にインセンティブをつくることができていますか?

3-3 活動をどう広げていくか?

1.いきなり大きなことをやろうとしていませんか?
2.大きな文脈につなげて考えられていますか?
3.短期的に利益が出る事業“だけ”しようとしていませんか?
4.活動を継続するための最低限のお金としくみはありますか?

4章 共創しやすい社会をつくるために

4-1 個人・プロジェクト・社会環境の3つを揃える

4-2 共創が起きやすい社会環境とは

1.共通する課題認識がある
2.ステークホルダーをつなぐ場や組織があり、つなぎ手がいる
3.(国・自治体・企業に)明確なビジョンや構想がある
4.リスクを負担するしくみがある
5.社会関係資本がある

4-3 共創を実現する個人の姿勢と連帯

1.自分の想いと行動をつなぐ、自分と社会をつなぐ
2.中長期的な価値を信じる
3.多くのステークホルダーと向きあって想いを共有する
4.自分の領域から一歩踏み出す
5.チャレンジを形にして発信する
6.賛同を表明する

4-4 パーパスフッドの時代

おわりに

吉備 友理恵

株式会社日建設計イノベーションセンタープロジェクトデザイナー。1993年生まれ。神戸大学工学部建築学科卒業。東京大学大学院新領域創成科学研究科社会文化環境学専攻修士課程修了。株式会社日建設計NAD室(Nikken Activity Design Lab)に入社し、一般社団法人Future Center Alliance Japanへの出向を経て現職。都市におけるマルチステークホルダーの共創、場を通じたイノベーションについて研究実践を行う。共創を概念ではなく、誰もが取り組めるものにするために「パーパスモデル」を考案。

近藤 哲朗

ビジュアルシンクタンク「図解総研」代表理事。1987年生まれ。東京理科大学工学部建築学科卒業。千葉大学大学院工学研究科建築・都市科学専攻修士課程修了。面白法人カヤックでディレクターを務め、2014年株式会社そろそろ創業。「ビジネスモデル図解」で2019年度GOOD DESIGN AWARD受賞。2020年「共通言語の発明」をコンセプトに「図解総研」を設立。共同研究により「パーパスモデル」を考案。主な著書に『ビジネスモデル2.0図鑑』(KADOKAWA)、『会計の地図』(ダイヤモンド社)など。

誰もが“共創”に向かう時代

変化が激しく、課題が複雑化する現代において、1組織や1人の力では変化に対応できなくなっている。だからこそ、企業だけ、行政だけ、専門家だけ、政治家だけ、若者だけではなく、さまざまな人や組織の視点を掛け合わせて、今までにない創造的な解決策をつくっていく必要がある。
企業も行政も大学・研究機関も、これまでの自前主義や縦割りの構造に限界を感じて、オープンイノベーションに向かい、「ESG投資」「SDGs」「パーパス」といった言葉も社会で徐々に浸透し、私たち個人においても「社会的意義を重視する」「持続可能な社会」という考え方が広まってきた。実際、この本を書き始めた時にはほとんどなかった「パーパス」や「共創」をテーマにした本も見かけるようになった。そしてこの本を手に取ってくれたあなたも、そんな言葉が気になっている1人かもしれない。

共創とは、社会課題の解決を目指し、多様なステークホルダーが自分たちの領域を互いに一歩踏み出して、知を組み合わせることで、新たな価値を創出することである。
私は普段、企業のイノベーション部門で社内外をつなぎ共創のきっかけをつくる仕事をしながら、一般社団法人で共創の研究に取り組んでいる。そんななかで感じるのは、「共創」や「パーパス」といったものが、概念としてはなんとなく大事だと共有され始めているものの、「パーパスは何のために必要なのか?」「共創って実際どうしたらいいの?」という疑問について明快な答えを見つけられないまま、みんなが試行錯誤しているということだ。私もその1人である。また、プロジェクトの中長期的な価値を伝えきれなかったり、共創的なプロセスが理解されず、思うように進められない場面もたくさん見てきた。
私はこうした自分の疑問に向き合うため、共創プロジェクトを細かく調べ始めた。一般社団法人Future Center Alliance Japanの中で「PURPOSEHOOD PROJECT」というリサーチプロジェクトを立ち上げ、同じ疑問を持つ組織を超えた同世代と、FCAJ理事たちのアドバイスのもと、「パーパスでつながる共創とは何か」を調査した。インタビューやデスクリサーチを通して、だんだん見えてきた共創プロジェクトの中身を伝えるために、図解総研の力を借りて可視化したのが、本書で紹介する「パーパスモデル」である。

私は共創を概念ではなく、手触り感のあるものにしたい。先の見えづらい今の社会で、自分1人ではできないことでも、少し視野を広げて、誰かと一緒に取り組めばできるかもしれない、という選択肢をつくりたい。
もちろん、大きな変化は一気に起きないし、じれったいほど時間がかかることもある。実際、電気だってエジソンらが発明した時代から、インフラとして街に電気が灯るまで約50年かかったと言われている。社会に変化をつくるなんて大きくて自分ごとじゃないと感じる人もいるかもしれない。でも、あなたが向き合っていることは、必ず社会を前に進める変化につながっている。
小さくてもいいから、新しい価値観を世の中に提示して、その価値観に共感する人の割合を増やしていくことで、社会はじわじわ変わっていくものだ。そんな新しい価値観を社会に実装する土台や事業、しくみをつくっていくことと、人を巻き込んでいくことに、共創という手法は向いている。
業種、セクター、専門性など、これまで重視されてきたものが異なる者同士が一緒に取り組むためには、「自分がこうしたい」という想いだけではうまくいかない。それぞれができること、やりたいことを大事にしながらも、多様なステークホルダーをつなぐプロジェクトのパーパス、つまり「共通目的」が必要である。
多くの人が関わり、試行錯誤してプロジェクトを進めていくなかで、短期的な成果が見えにくかったり、いろいろ意見が飛び交って方向性が見えなくなったり、「あれ?そもそも何のためにやっていたんだっけ?」と、案外目的を見失ってしまうことも多い。パーパスモデルはそんなとき、一度みんなが立ち戻って、また進みだすためのコンパスになる。いろいろな人を巻き込んで、これまでにない新しい取り組みに挑戦している人、ステークホルダーが多いプロジェクトをまとめている人、自分1人ではできない大きな夢を持っている人に、パーパスモデルを使ってほしい。

本書では、まず1章でパーパスモデルについて、開発の背景からつくり方、使い方まで紹介する。2章では国内外の19の共創プロジェクトについてパーパスモデルとともに紹介し、3章で従来のプロジェクトとの違いや共創プロジェクトにどう取り組めばよいかを考察する。そして4章では、これまでのプロジェクトの考察から見えてきた、共創しやすい社会をつくる「個人」と「社会環境」の重要性についてまとめる。
今回、どのような立場にいる読者であっても共創という考え方がイメージできるように、取り上げる事例の規模感、テーマ、主体はあえてバラバラにした。自分には直接関係がない事例であったとしても、そこには共通点があることを感じてもらえると嬉しい。
共創はプロジェクトの大きさにかかわらず、価値のある行為だと思う。なぜなら、それぞれの主体が「これまでになかった新しいことに、一歩ずつ踏み出すチャレンジをする」ことだからだ。その新たなチャレンジは小さくとも社会に変化をつくり、そういった人々のチャレンジの積み重ねと持続の先に、より大きな変化を起こせると信じている。

吉備友理恵

 「立場を超えた人や組織がより良い社会を目指して共に新たな価値を創造する」

1つの組織に縛られたくないと思っていた私は、「共創」という考え方が妙にしっくりきた。当時、私は株式会社日建設計から一般社団法人Future Center Alliance Japanにリサーチャーとして約2年間出向していた。短期的・数字的に評価されづらいイノベーションの場のための評価モデル(EMIC)をつくるリサーチに関わり、国内外の20拠点以上に足を運び、インタビューを行った。
そのなかでオープンイノベーションや共創の重要性が語られつつも、実践までのハードルが高いことを思い知った。そして組織や立場を超え、業種を超え、セクターを超えて共創を実現するのはもっと難しいのだと、一時は落胆したこともあった。正直最初の1年は思うように進まない組織同士の共創の取り組みに期待とのギャップを感じ、ずっともやもやしていた。
しかし、社会に向きあい行動する友人たちを見ると、それが共創だと意識しないくらい自然につながり、新しい商品やサービスなど意義あるアウトプットをつくっている。彼ら・彼女らを見ていると、今までの当たり前を超えて、違和感に声を上げ、新しい価値観とより良い未来を、組織や立場を超えてつくっている気がした。だからこそ、私は個を起点とした共創の価値を信じることができたし、変化はつくっていけると背中を押された。

2020年6月。Twitterにパーパスモデルを初めて投稿したことがきっかけで、本書の出版が決まった。当初作成していたモデルはまだ4つしかなく、その速度にとても驚いたのを覚えている。
共創について、研究・実践の経験も浅い私に何か書けるだろうか…と思った。そんなとき「共創やイノベーションは答えが見つからずみんなが試行錯誤しているもの。企業の役員だろうが、大学の教授だろうが、同じひよっこで、確立された正解もない。知見はどんどんシェアしていくことに意味がある」と言われたことが後押しになり、本書の執筆を決めた。
パーパスモデルは「パーパスを中心とした共創プロジェクトの設計図」である。どんな人がいるか、どんなことをしたいか、どんな課題があるのか、どんなことができるのか、共通するものは何か、自分が掲げたパーパスを実現するには誰が必要か、そんなことを考えるためのものだ。
このモデルはパーパスをつくることそのものに主眼を置いているわけではないので、探求する課題や切り口を棚卸しするツールとして、世の中にあふれる創造的なアイデアを生む探求手法と合わせて使ってほしい。
もちろん設計図を考えるより、とりあえずやってみることの方が大事なときもあるかもしれない。パーパスモデルは、「構想が人に伝わらない」「誰に声をかけたらいいかわからない」といった、プロジェクトを進める上で何か壁にぶつかったとき、一度設計図を書いて試行錯誤したことを棚卸ししてみるときに使ってほしい。そして走っている途中で「誰かと意見が合わない」「新たに人を巻き込みたい」ときにはコミュニケーションツールとしても使えるはずだ。

本書を出版する前からパーパスモデルのツールキットはオープンソースにしている。パーパスモデルには決められた使い方はないので、自分なりの使い方をしてみてほしい。そして、もしよければ、どんな使い方をしてもらえたのか、教えてほしい。1章で紹介したリンク先(36頁参照)では、実際にどんな人がどんな風に使ってくれているのか知見を紹介していくつもりだ。パーパスモデルが実際のプロジェクトの中でどう機能したか、私の想像を超えた世界がそこにあったので、是非参考にしてほしい。
本書も、私自身が何か特別な知見を持っていたわけではなく、世の中の多くの人が試行錯誤しながらアップデートしてきた知見を集めてできたものである。だからこそ、もっと多くの事例から共通項を見出して共有していきたいし、私自身の考え方もアップデートしていきたいと思う。

パーパスモデルをつくってから、本当にいろんな使い方をしてくれている素晴らしいみなさんと出会ってきた。
「共創って意味あるの?」と思っている人に「あなたにも取り組むメリットがこんなにありますよ!」と言えるようになったり、先が見えないことに不安を感じている人に「私たちはこんな未来を目指しているから、そのために今この活動をする意義がちゃんとあるよ」と声をかけられたり、自分の考えていることを言語化できないと悩んでいる人が「自分が考えていること、やってきたことって、こうだったのか」と改めて気づけて人に説明できるようになったり…、こんなふうにさまざまな使い方をしてくれているみなさんの話を聞いたとき、このモデルをつくってよかったと心底思う。

パーパスモデルは料理でいう「レシピ」のようなものである。美味しい料理をつくって食べてもらって初めて意味があると思っている。実践者のみなさんに試行錯誤の過程で使ってもらって、みなさんの変化の手触りにつなげていただけると、とても嬉しい。
変化する時代に、パーパスという共通言語をもって、人がつながっていくことに、私は希望があると思っている。だから、短期的な成果や業務に追われることがあっても、長期的な価値と自分たちが生きたい未来を信じて、みなさんと一緒に踏ん張りたい。

2022年8月 吉備友理恵

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