都市公園のトリセツ

平塚勇司 著

内容紹介

役立つ法令解釈や運用方法を対話形式で解説

都市公園が公共空間としての役割を最大限に発揮するには、整備・管理する行政、行政と連携し公園運営等を担う民間事業者等、利用する市民の三者全てがWin-Win-Winであることが必要だ。本書では、各主体が都市公園を使いこなすための正しい法令等の知識や運用方法をQ&Aの対話形式で解説。現場で役立つ法令解釈や考え方を明快に提示する

体 裁 A5・220頁・定価 本体2500円+税
ISBN 978-4-7615-2741-9
発行日 2020/07/10
装 丁 中川未子(よろずでざいん)


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「はじめに」本書の読み方

「第5話 都市公園という制度はなぜできた?」イントロ

「第9話 これは公園施設に該当しますか?」イントロ

「第15話 都市公園の新たな公民連携手法「Park-PFI」とは?」イントロ

第1章 都市公園というパブリックスペースの基礎知識

第1話 「都市公園」とは?

コラム 法律における「条」「項」「号」について

第2話 都市公園はどのくらいある?

コラム 公園緑地行政の今後の方向性

第3話 都市公園にはどのような種類がある?

コラム 法律? 政令? 省令?

第4話 都市公園は何の役に立っている?

コラム 都市公園の多様な機能

第5話 都市公園という制度はなぜできた?

コラム 都市公園の歴史を学ぶことができる本

第2章 民間事業者等による整備・管理運営に関係する法令の規定

第6話 都市公園に設置できる施設は?

コラム 都市公園で民間事業者が設置・管理している飲食店の事例

第7話 都市公園に施設を設置するにはどのような許可がいる?

コラム 都市公園という公物の特殊性

第8話 都市公園に設置できる建物の面積はどのくらい?

コラム 「建蔽率」の話

第3章 行政が都市公園を使いこなす上での課題とその対応方策

第9話 これは公園施設に該当しますか?

コラム 公園管理者が手元に置いておくべき本

第10話 都市公園は廃止できる?

コラム 「運用指針」とは

第11話 小規模公園はなぜ多い?

コラム 小規模公園に関するデータ

第12話 小規模公園をうまく使いこなすには?

第13話 公園をマネジメントするためには?

コラム マネジメントプランの事例

第4章 公民連携で都市公園を活用してゆくための手法

第14話 まちに役立つ都市公園になるためには?

コラム 保育所と都市公園 Win-Winな関係に向けて

第15話 都市公園の新たな公民連携手法「Park-PFI」とは?

コラム Park-PFIの事例

第16話 Park-PFI以外の公民連携手法にはどのようなものがある?

第5章 市民が都市公園を利用するときの疑問と関係する法令の規定

第17話 都市公園の禁止事項はどのように決まっている?

コラム パブリックスペースのルール

第18話 都市公園でやりたいことをやるためには?

索引

平塚勇司

現職:国土交通省 九州地方整備局 国営海の中道海浜公園事務所長。

静岡県三島市出身。早稲田大学第一文学部卒業。横浜国立大学の大学院で植生学を専攻後、2001年に造園職として国土交通省に入省。国営公園事務所、九州地方整備局、国土交通省本省で勤務。「新たな時代の都市マネジメントに対応した都市公園等のあり方検討会 最終報告書」のとりまとめ、2017年の都市公園法の改正などに携わる。

「公園」という言葉はなじみがあると思いますが、「都市公園」となるとあまりなじみがないかもしれません。

都市公園は全国に約11万箇所あり、恐らく普段目にする「○○公園」と名の付いた近所の公園の多くは都市公園です。その数を全国の小学校数(約2万箇所)、郵便局数(約2万4千箇所)、コンビニエンスストア数(約5万6千箇所)などと比較してみれば、都市公園がいかに身近な施設であるかが分かります

もちろん、最初からこれだけの都市公園があったわけではありません。都市公園法という法律が昭和31年(1956年)にできて以来、60年以上かけて整備が進められてきた結果、都市公園が日常生活の中に当たり前に存在する時代になりました。

都市公園が足りなかった時代は、都市公園をいかに効率的・効果的に整備するかが主な課題でしたが、都市公園の整備が進み、社会情勢も変わってくると、課題はそれだけに留まりません。人口が増加する社会から減少する社会へと移行していく中、市民の生活をより豊かにするために都市公園はどうあるべきか、少子高齢化等に伴う利用者層やニーズの変化に都市公園はどう対応すべきか、厳しい財政状況の中で老朽化が進行する施設をどう更新すべきか、など公園管理者である国、地方公共団体が直面している課題は枚挙にいとまがありません。

このような全国の公園管理者が共通で直面している課題にいかに対応すべきかを議論するため、国は、有識者等からなる検討会を平成26年(2014年)に設置しました。その議論の結果、都市公園は、量的な整備水準よりも、その多機能性を都市のため、地域のため、市民のために発揮することを重視する新たなステージへ移行すべきという方向性が示され、それを具体的に実現すべく都市公園法が平成29年(2017年)に改正されました。

今、公園管理者は、各々が直面している課題等に応じて、新たな制度の活用や限られた資源(予算等)のメリハリある投入により、個々の都市公園のポテンシャルを引き出す、つまり「都市公園を使いこなす」ことで、都市を、市民生活をより良くするための取組を推進しています。

しかし、求められる役割はより高度化、複雑化していく一方で、都市公園の整備・管理の現場の体制はどうでしょうか。公園専門の職員(いわゆる造園職)はおろか、公園専門の組織がない地方公共団体も少なくありません。そして「後任は、都市公園は初めてですが……」という言葉とともに数年で職員の多くは入れ替わってしまいます。このような状況を目の当たりにしているうちに、人の入れ替わりに大きく左右されず、継続的に組織として都市公園の法律の理解やその運用ノウハウを蓄積する必要性を痛感していました。

そこで、少しでもその助けになれば、との想いから、実務担当者が知っておくべき都市公園の基本をまとめた解説資料を業務の合間に作成し、「ちょっとゆるい都市公園講座」と題して希望する地方公共団体にメーリングリストで送付する試みを、前職である九州地方整備局建政部在任中に始めました。

幸いにも好意的に受け入れられ、「いつも楽しみにしている」との声を励みに少しずつ作成してはお送りしていましたが、連載が続いていくにつれ、「本にしないのか」という声も少なからず頂くようになりました。

本書は、そのようなきっかけで、平成30年度(2018年度)に約1年かけて作成・送付していた上記資料を、より幅広く、市民や民間事業者の方など行政以外の方にとっても役立つものになるよう、追記、修正を行うことで誕生しました。
都市公園に様々な形で関わる方々にとって、都市公園の理解が進み、都市公園を暮らしの質を高める資産として使いこなすための取扱説明書のようなものになれば幸いです。

令和2年(2020年)6月
平塚 勇司


※各施設の箇所数の出典は以下の通り。
都市公園数:国土交通省調べ(平成30年度(2018年度)末現在)
小学校数:文部科学省統計要覧(平成30年度(2018年度)版)
郵便局数:郵便局局数情報(令和元年(2019年)7月31日時点)
コンビニエンスストア数:(一財)日本フランチャイズチェーン協会 コンビニエンスストア統計データ(平成30年度(2018年度))

本書の執筆を海の中道海浜公園の事務所長という立場で終えることとなりましたが、この公園は私の公務員人生のスタートとなった思い出深い場所でもあります。

社会人初めての職場として赴任し、右も左もわからないまま、初めての仕事としてこの所長室に入ったのは、法第5条の設置管理許可の決裁の時だったと記憶しています。

先輩から頂いた起案データを使い回し、何の理論武装もしなかった私は、「どういう根拠で施設の設置を許可できるの?」「法第5条第3項って何?」という所長からの問いに当然答えることはできず、「法律を読んで出直しておいで」と優しく諭されたことを憶えています。

恥ずかしながら、都市公園法を初めて読んだのはその時でした。

その後、2年目から国土交通省の本省に勤務となりましたが、不勉強は相変わらずで、上司から法令の解釈を問われた際、私の答えに下された評価は「マイナス30点!」。

そのような私が法令に関する本を執筆する日が来るとは夢にも思いませんでしたが、それもここまで育てていただいた諸先輩方、同僚、友人の皆様のおかげであり、心より感謝申し上げます。

特に、上記の入省当時の海の中道海浜公園の所長、現在の本省の公園緑地・景観課長として本書の執筆への助言をはじめ様々なご指導をいただいた古澤達也氏、都市公園のこれまでとこれからについて、知識と熱意で私の蒙を啓いてくれた福井県立大学学長の進士五十八氏、本書を出版するきっかけをつくってくださった日本公園緑地協会の川端清道氏、そして、本がより充実した内容になるよう丁寧にアドバイスいただいた学芸出版社の松本優真氏に感謝申し上げます。

新型コロナウイルス(COVID-19)の感染拡大により様変わりしてしまった公園に、笑顔あふれる何気ない日常が一日でも早く戻ることを祈りつつ……。

令和2年(2020年)6月
平塚 勇司

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