飛び出す!公務員

椎川忍・前神有里・井上貴至 ほか編著

内容紹介

組織の枠を超え地域に飛び出す人の道しるべ

役所から飛び出し、地域活動やNPOに参加したり、民間や他の自治体、さらには独立する公務員が増えてきた。後押しする制度改革も進んでいる。そこで、とびっきりの飛び出し公務員98人に、自らの体験を元にその楽しさ、得られたものを率直に書いて頂いた。これから飛び出そうとする人達を勇気づけ、道しるべとなる本。

体 裁 四六・272頁・定価 本体1800円+税
ISBN 978-4-7615-1376-4
発行日 2021-11-15
装 丁 見増勇介(ym design)


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地域人財「飛び公」の勧め

公務員は、事務分掌規程で定められた職務を無事・無難にこなしていけば、失業ということはなく有給の生活を送ることができる。意に染まぬ職場へ配転され人間関係に悩むことはあっても、じっと我慢していれば、定年を迎え年金生活に入れる。そうした公務員生活が悪いとか間違っているとかというのではない。ただ、それでは物足りないと思っている公務員もいる。職域や日常業務を超えて地域づくりに参加する職員が出てきた。それが「地域に飛び出す公務員」、略して「飛び公」である。
98人の「飛び公」それぞれに、飛び出したきっかけはなにか、だれとどんな活動を始めたのか、自分はどう変わったのか、どんな体験をし、何を学んだかを文章に綴ってもらい、読みやすく編集して実践集にまとめたのが本書である。
本書から地域人財としての公務員のリアルが浮かび上がってくる。職場での仕事と一味も二味も違うもう一つの活動の場へ歩み出そうとしながらも躊躇している公務員にもお勧めである。地域住民の集まりの常連として勤務外の公務員がいて、いきいきと振舞っている光景はいいものである。
大森 彌|東京大学名誉教授

98名の先駆者たち

「天下に機あり、務あり」吉田松陰の言葉の如く、その時機に即して時代を拓く行動を起こすことをためらってはいけない。コロナ禍、災害、地域の停滞…。無数の「壁」を打ち破るためには、今までの「公務員」の衣は打ち捨て、役所以外でも頼りになる人材として地域の中での活躍に踏み出していく。真の地方創生はそうした挑戦で扉が開くのだ。役所勤めの常識を越えた「ニュー公務員」が飛び出し始めた。地域の未来に続く空へと。

平井伸治|鳥取県知事、地域に飛び出す公務員を応援する首長連合前代表

「自遊」な生き方の道標となる一冊

組織や立場、役所での仕事の枠を軽やかに飛び越え、地域のためにと思ったことを自由に追求し、悪戦苦闘しつつも、多くの仲間と共に楽しみながら活動する公務員たち。本書に登場する98人の生き生きとした「自遊」な生き方こそが、今の時代の公務員像です。その姿は、これから地域と共に歩んでいこうとする多くの公務員たちの道標となっていくでしょう。

都竹淳也|飛騨市長、地域に飛び出す公務員を応援する首長連合代表代行

はじめに

1 「飛び出す」ススメ

01 参加しやすい「知域」にまずダイブする…後藤好邦
02 公務員人生を変えた自主研への参加…坂本勝敏
03 「ワクワク」を糧に飛び出してみる…藤田正樹
04 心を開いて「出会い」に向かう…國信綾希
05 飛び出すとは「鎧を脱ぐ」こと…野﨑伸一
06 いつでも、なんでも提案しよう…井上貴至
07 タタカワナイ、応援し合える関係性を築く…前神有里
08 つながりをつくる…永井英雄
09 つながりを楽しみ自分を磨く…相澤智生
10 職員自主研究グループのすすめ…黒木隆介
11 面白そうなら迷わず飛び込む!…今村陽子
12 夢の実現へシナジーキャリアのすすめ…晴佐久浩司
13 面白いは創れる!…伏喜マリエ
14 とりあえずチャレンジしてみる…小﨑あすみ

2 飛び出し方にスタイルはない

15 迷走を楽しむ中山間地の公務員ライフ…徳田匡彦
16 大好きな市に残り、地域の何者かを目指す…後藤雅人
17 ヒョウ柄の公務員、田んぼから愛を叫ぶ!!…村田まみ
18 スポーツで培った精神を職務に活かす…磯村賢一
19 得意を活かして地域と関わる…江上昇/桂山智哉
20 マイパブリックを備えた究極の趣味…後藤努
21 プライベートの1時間を使って小さく始める…山田崇
22 まちのファンと幸せな家族を増やして生きる…高橋陽子
23 中山間地の集落を未来へ残したい…佐藤大祐
24 偶然を必然に…齋藤道夫
25 市役所のロックシンガー、地域に出る…稲葉淳一
26 世を補益する地域人財育成…長野敏秀
27 パラレルキャリアが導く成長と可能性…崎本龍司

3 本業にゆるくつながる

28 「やってみたい」から始まる緩い掛け算…石川晴子
29 スイーツ部は止まらない!…関市役所スイーツ部
30 小さな出会いが重なってNPO活動に…前田昇
31 ライフワークとして「ふるさと」にかかわる…長野麻子
32 テレワークを活用したひきこもり支援…大橋志帆
33 どこまでが仕事で、どこからが遊びか!?…吉中力
34 山歩きと地域SNSで広がる仲間の輪…牧慎太郎
35 最後の拠り所となる形のないものを残す…奥田晃巳
36 古民家の掃除から始めたYATUGI…菊地祐香
37 食で地域を元気に…西川展子
38 子どもたちに想い出をつくる…高本恵三
39 柔軟に動き回るタコ足ケアシステム…平野香
40 資格を生かしまちの保健室を開催…黒田藍
41 市職員である前に一人のみしまびと…小嶋敦夫
42 自分のために誰かのために…山中正則
43 公務員×NPO職員は最強…永井健太
44 仕事以外にも何かするっていい!…渡邉秀太

4 まちづくり、地域づくりに飛び出す

45 百見は一験に如かず…浅川裕介
46 「公」「私」の領域で地域の未来を担う…安富圭司
47 大崎町ってどんな町?に答えた30年…中野伸一
48 書を捨ててまちへ出かけよう…原田幸雄
49 本気で楽しむ、諦めない、まちづくり…小林遼平
50 面白いこと以外、禁止…中軽米真人
51 やれることは全部やる…岡本啓二
52 庁外に広がるチームといっしょに…猪狩僚
53 やってみなくちゃ、わからない…西出覚
54 飛び出して得た立方体ネットワークを活かす…前城充
55 私を生かして、地域を活かす…齋藤拓也
56 参加者だけでなく運営側も楽しめる…森島慶介
57 「金山の時間」で紡ぐ新たな関係づくり…丹健一郎
58 現場と伴走する「半官半X」の働き方…濱中香理
59 皆が居心地のいい絵本のお部屋をつくる…加藤淳子
60 「ご縁」でつながる図書館…豊山希巳江
61 勇者と共に仲間探しの旅…植木美千代
62 魅力があるのに誰も通らない商店街…田中菜生
63 地元愛溢れる若手経営者たちと共に…胎中謙吾

5 住民の懐に飛び込む

64 相手の思いから会話を始める…卜部直也
65 地域のやる気を引き出す技術を持とう…髙橋信博
66 「人づくり」は、必ず報われる…澤田史朗
67 自分のまちならどうかを考える…安藤亨
68 地域に出て100回失敗しよう…中嶋結也
69 職員は人と人をひっつける「見えない接着剤」…西村一樹
70 話を聞いてもらえる強味を生かす…新井啓明
71 自分で考え、住民の声に気づく…川原敏之
72 地域に暮らす住民が先生…亀山芳香
73 一線をおきながら地域に入る…杉本拓哉
74 地域が見えると数字を追う仕事も面白い…松井美幸

6 組織の風土を変える

75 行動を起こせば何かが変わる…波多野翼
76 カルチャーショックを受けた事務分掌…斉藤正晃
77 業務改善とは、その仕事の意味を考えること…及川慎太郎
78 オンラインでつながる域学連携…前田剛
79 行政がつなぐ研究学園都市の科学と地域…毛塚幹人
80 実践から始まる地域での対話の場…佐々木絵理
81 デザイン思考を用いた政策形成…澤田有希子
82 書かない窓口、始めました…齋藤理栄
83 「働く」に視点をおいた横断事業…齋藤猛
84 RESASでお金の地域循環を高める…兼松敬史
85 自治体と金融機関が地域を想う場…菅野大志
86 港区と全国のきずな創生人…溝口貴裕
87 職員の震災経験を未来へつなぐ…柳谷理紗

7 さらに大きく飛び出す

88 自治体から自治体へ、横に飛び出す…吉弘拓生
89 県から一番小さな自治体に飛び出す…青山幸一
90 架け橋人材による楽しいまちづくり…竹山和弘
91 求ム!政治に飛び出す公務員…石井あゆ子
92 早期退職し、その後を全力で駆け抜ける…清水安治
93 公務員へ贈る言葉…岩永幸三
94 ライフワークは地域おこしと人材育成…椎川忍
95 本庁20名、島民300人の島の醍醐味…荻野了
96 民間と公務員を経験した者の役割…千葉稔弘
97 官民を経験しそれなりに分かる通訳者…三宅康裕

□飛び出す公務員を語る―オンライン座談会

【編著者】

椎川 忍

(一財)地域活性化センター理事長

牧 慎太郎

自治大学校客員教授

澤田 史朗

内閣官房

野﨑 伸一

厚生労働省

井上 貴至

山形県山形市副市長

前神 有里

(一財)地域活性化センター人材育成プロデューサー

後藤 好邦

山形市役所

吉弘 拓生

(一財)地域活性化センター

発行協力・監修:(一財)地域活性化センター

「地域に飛び出す公務員ネットワーク」(以下「飛び公ネット」という)の活動を始めたのは2008年で、メーリングリストを中心としたゆるいネットワークだった。全体の集まりは、「地方公務員有志の会」(当時の会長は、三重県職員の山路栄一さん)などとのコラボで開催した程度であったが、地域別のオフ会は自主的に何度か開催されていた。
そして、3年後の2011年には「地域に飛び出す公務員を応援する首長連合」(以下「首長連合」という)を創設していただいた。その後は、毎年開催されている首長連合サミットに多くの飛び公ネットのメンバーが参加するとともに、その事務局は飛び公ネットの皆さんが勤めている。

「地域に飛び出す公務員」(以下「飛び公」という)は、飛び公ネットのメンバーでなければならないとか首長連合に参加している自治体の職員でなければならないとかいうものではない。公務員特に地方公務員は、本来的に仕事をして給料さえもらえばいいというものではなく、プラスワンで地域活動や社会貢献活動をすべきものであり、それを形にしたのが「飛び公」運動である。
私自身はそのような活動をしている人たちを自治体勤務の機会にたくさん見てきて、なんとかそのような実態を世の中に伝えたり、もっとアピールしたりしたいと考えてきた。
その当時は、「飛び公」はたくさんいても、まだまだ肩身の狭い思いをしたり、変人扱いをされたりしている人が多かった。しかし、今はどうだろう。我々の運動の成果だけでなく、平成から令和という時代の潮流が彼らを表舞台に押し出していったように感じる。民間企業も含めて副業や兼業のメリットを積極的に認める時代になり、転職もかなり自由になった。
かくして、公務員は地域活動や社会貢献活動だけでなく、公務で培ったスキルを活かしてさまざまな所に飛び出して行っている。民間企業のみならず他の自治体への転職も多くなってきており、政治家に転向する人も増えている。早期退職して自分で事業を始める人、大学教員などになる人も多い。またこの流れは当初私が想定していた地方公務員にとどまらず、国家公務員にも及んでいる。

十数年前には、特異な存在、変人と言われていた「飛び公」が時代の流れとともに、表舞台に出てきて世間から評価されるようになっている。私が現役時代に創設した地域おこし協力隊とのコラボもこのような評価に貢献したに違いない。しかし、地域おこし協力隊は研究論文にも多く取り上げられ、我々もたびたび出版をしてきたが、「飛び公」は残念ながらそこまでいっていないのが現状である。
そこで、私のライフワークである「地域おこしと人材育成」の集大成として、編著者の皆さんの賛同と協力を得て、全国の「飛び公」およそ100人を募ってその体験談を披露してもらい世の中に問うてみることを決意した。今や私が知らないたくさんの「飛び公」が全国で活躍しており、本当にさまざまな「飛び公」がいるものだと感慨深い。

どうか皆さんも公務員の悪いところだけをみたり、一部の間違いを起こした公務員をあたかも公務員の全体像であると考えたりするのではなく、こんな素晴らしい公務員もたくさんいるのだ、と認識を深めてほしい。
それが、この本の一番の狙いであり、世の中に問うべき目標であり、私の「飛び公」活動の集大成である。

一般財団法人地域活性化センター理事長
椎川忍

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