改訂版 実務から見た基礎構造設計


上野嘉久 著

内容紹介

実務者待望の全面改訂版。この一冊で万全。

実務経験から生み出された実務設計術を、計算手順が理解しやすく、設計の参考資料としても役立つように5階建程度の実際の設計例をもとに解説。必要な資料を使いやすい図表にまとめ、法令や告示、日本建築学会の規準等必要な規準・指針の要旨を網羅している。大好評の『実務から』シリーズ待望の改訂版。構造設計者の座右の書。

体 裁 B5・264頁・定価 本体6600円+税
ISBN 978-4-7615-4077-7
発行日 2006-01-30
装 丁 倉本 修


目次著者紹介まえがき正誤情報書評

100 基礎と地盤

110 基礎の分類と索引
120 主要用語
130 構造関係法令の基礎知識
140 基礎に関する「法」「令」「告示」
141 「令」38条
142 平12建告1347
143 「令」93条
144 平13国交告1113
145 「法」90条,「令」136条の3

200 地盤調査

210 地盤調査の種類と方法
220 土質試験について
221 物理試験
222 力学試験
223 化学試験
230 〈構造設計の定石〉地盤調査の仕様
240 土と地盤
241 地盤の分類
242 日本統一土質分類法
250 地盤の実務的分類
251 実務で用いられる土質名,土質記号とN値
252 許容地耐力を求めるための分類
253 土,地盤の種類の現場的識別方法
254 地震力に係わる地盤種別
255 地層と地質時代

300 基礎構造の選定

310 直接基礎と地業の選定
311 〈構造設計の定石〉直接基礎か杭基礎かの選定表
312 地業の選定
320 杭基礎の選定
321 杭基礎の選定表
322 既製杭について
323 既製コンクリート杭の施工法
324 埋込み杭工法の選定
325 場所打ちコンクリート杭工法の選定
330 〈構造設計の定石〉支持杭に頼りすぎていないか

400 地盤の許容応力度

410 ボーリング調査結果等による地盤の許容応力度 qa の算定
411 qa 算定式(平13国交告1113第2(1)項)
412 qa 算定式の解説
413 〈構造設計の定石〉qa 算定の実務式
414 〈構造設計の定石〉qa 算定式の係数の求め方
415 〈構造設計の定石〉N値と許容地耐力
416 〈設計例1〉qa の算定(砂質地盤の場合)
420 平板載荷試験結果による地盤の許容応力度 qa の算定
421 qa 算定式(平13国交告1113第2(2)項)
422 qa 算定式の解説
423 〈設計例2〉平板載荷試験による qa の算定
430 スウェーデン式サウンディングによる地盤の許容応力度 qa の算定
431 qa 算定式(平13国交告1113第2(3)項)
432 〈設計例3〉スウェーデン式サウンディングと許容地耐力

500 地盤改良の設計

510 地盤の改良体の許容応力度
520 深層混合処理工法
521  改良地盤の鉛直支持力の検討
522  〈設計例4〉深層混合処理工法の設計
530 浅層混合処理工法
531 改良地盤の鉛直支持力の検討
532 〈設計例5〉浅層混合処理工法の設計

600 沈下量の検討

610 沈下量の限界値
620 地中応力の計算
621 集中荷重による地中応力
622 分布荷重による地中応力(長方形分割法)
630 即時沈下量 SE の算定(砂質地盤)
631 SE の算定式
632 〈設計例6〉SE の算定
640 圧密沈下量 S の算定(粘土質地盤)
641 S の算定式
642 〈設計例7〉S の算定

700 杭の許容支持力

710 地盤に対する許容支持力 Ra の求め方
711 支持杭の Ra 算定式
712 摩擦杭の Ra 算定式
713 杭,地盤アンカーの引抜き方向の許容支持力
714 支持杭における負の摩擦力の検討
715 〈構造設計の定石〉各種の杭の Ra 算定式一覧表
716 〈構造設計の定石〉N の求め方および支持層への根入れ深さ
717 〈構造設計の定石〉RF 算定で杭周面摩擦力を無視しなければならない地盤
718 〈構造設計の定石〉N値と1軸圧縮強度 qu の関係
719 〈構造設計の定石〉意外と大きい杭周面摩擦力 RF
720 杭体の許容耐力 Pa の求め方
721 Pa の算定式
722 杭体等に用いる材料の許容応力度
723 杭体の継手,長さ径比による低減率
724 杭体の許容応力度および低減率一覧表
725 各種の杭の Pa
730 打込み杭の設計
731 支持力算定式による Ra の算定
732 打込み杭の先端閉そく効果率(昭53通達806)
733 〈設計例8〉打込み杭の Ra の算定
740 埋込み杭の設計
741 支持力算定式による Ra の算定
742 〈設計例9〉埋込み杭の Ra の算定
743 〈構造設計の定石〉高止まりの対策
750 場所打ちコンクリート杭の設計
751 支持力算定式による Ra の算定
752 〈設計例10〉場所打ちコンクリート杭の Ra の算定
753 〈構造設計の定石〉配筋設計のポイント
760 異形摩擦杭の設計
761 異形摩擦杭の工法
762 異形摩擦杭の Ra 算定式
763 〈設計例11〉異形摩擦杭の Ra の算定

800 地震力に対する基礎設計

810 地震時設計用外力
811 基礎構造に作用する地震時設計用外力
812 杭基礎における基礎スラブ根入れ効果による水平力の低減
813 〈構造設計の定石〉地震力により生じる鉛直力の増減
820 直接基礎の設計
821 地盤災害について
822 〈構造設計の定石〉転倒の力学
823 〈構造設計の定石〉めり込みの検討方法
824 〈計算例〉短期最大地盤応力度 σe の計算
825 滑動の検討
830 杭基礎の設計
831 地震力により生じる鉛直力に対する検討
832 水平力に対する検討
833 水平方向地盤反力係数 kh の求め方
834 βの一覧表
835 基礎スラブと杭の接合(半固定,剛接合)について
836 〈構造設計の定石〉杭径が異なる場合の水平力負担率
837 〈構造設計の定石〉基礎に作用する軸方向力と地震力用基礎重量
840 杭体の断面設計
841 PHC杭の断面設計
842 場所打ちコンクリート杭の断面設計
850 地震力に対する杭基礎設計例
851 〈設計例12〉PHC杭の断面設計例
852 〈設計例13〉場所打ちコンクリート杭の断面設計例

900 基礎スラブの設計

910 独立フーチング基礎の分類
920 独立基礎の設計
921 直接独立基礎の設計
922 独立基礎の断面,配筋のポイント
923 偏心独立基礎
924 〈設計例14〉直接独立基礎の設計
925 〈設計例15〉偏心独立基礎の設計
926 〈構造設計の定石〉基礎スラブ設計と基礎自重
930 杭基礎の設計
931 設計上の留意点
932 杭の間隔およびへりあき
933 杭独立基礎の設計
934 偏心杭独立基礎の設計
935 〈設計例16〉杭独立基礎の設計
936 〈設計例17〉偏心杭独立基礎の設計
937 場所打ちコンクリート杭の基礎スラブ設計
940 基礎スラブ設計のための定石
941 〈構造設計の定石〉基礎各部の荷重・反力の取り方
942 〈構造設計の定石〉基礎自体が偏心した独立偏心(杭)基礎の設計ポイント
943 〈構造設計の定石〉鉄骨造基礎に作用する M の取扱い

1000 基礎梁付偏心杭基礎

1010 〈構造設計の定石〉直接基礎の基礎梁付偏心基礎の設計ポイント
1020 基礎梁付偏心杭基礎の設計
1021 基礎梁付偏心杭基礎の設計ポイント
1022 〈構造設計の定石〉杭反力とせん断力
1023 両側偏心杭基礎の計算プロセス
1030 基礎梁付偏心杭基礎の設計例
1031 〈設計例18〉基礎梁付偏心杭基礎の設計(場所打ちコンクリート杭)
1032 〈設計例19〉基礎梁付偏心杭基礎の設計(PHC杭)
1040 〈構造設計の定石〉Me 算定時に基礎梁自重を加算しない理由

1100 栗コン・埋込み基礎

1110 栗石コンクリート地業(栗コン)
1111 〈構造設計の定石〉栗コンの設計法(長期)
1112 〈設計例20〉栗コンの設計例(長期)
1120 自立広告塔の基礎設計
1121 設計方針
1122 〈設計例21〉自立広告塔の基礎設計

付録

上野嘉久〔うえのよしひさ〕

1958年 大阪工業大学建築学科卒
株式会社吉村建築事務所、京都市住宅局建築課建築主事、
構造審査係長、営繕部等の主幹を経て
1989年 上野建築構造研究所設立、同所長
1990年 大阪工業大学講師
一級建築士、建築主事
著 書 『行政からみた建築構造設計 PARTⅠ』
『行政からみた建築構造設計 PARTⅡ』
『行政からみた建築構造設計 PARTⅢ』
『行政からみた建築構造設計 PARTⅣ』
『行政からみた建築構造設計』別冊
『行政からみた建築構造設計 基本事項』(以上㈱建築知識刊)
『実務からみたコンクリートのポイント10・ノウハウ20』(㈱オーム社刊)
『改訂版 実務から見た基礎構造設計』(㈱学芸出版社刊)
『改訂版 実務から見たRC構造設計』(㈱学芸出版社刊)
『第三版 実務から見た鉄骨構造設計』(㈱学芸出版社刊)
『第三版 構造計算書で学ぶ鉄骨構造』(㈱学芸出版社刊)
『改訂版 構造計算書で学ぶ鉄筋コンクリート構造』(㈱学芸出版社刊)
『構造計算書で学ぶ木構造―金物設計の手引き』(㈱学芸出版社刊)

建築構造設計は「力学」「法律」「経験」の総合されたものである.
特に「経験」のウエイトが大きく,構造設計は実務での経験の積み重ねによって成り立っている.この経験によって生み出された実務的な設計法が多くあるが,裏付け資料に乏しいこともあり,一般に公開されることは稀であった.
本書は,建築主事として,確認申請の構造計算書の審査を通して知り得た実務設計法を,筆者の実務経験と,公開されている先達の論考に照らし,「力学的」「法律的」裏付けを行い,編集したものである.
とりわけ,基礎設計においては,これといって決定的な指針がなく,実務設計者は何冊もの指針,規準を前に戸惑うことが多かったが,本書はこれらを実務的な観点から整理し,これ1冊で実務設計が可能なように必要な情報を整理することをめざした.すなわち,本書は一般には公開されていないが実際に広く行われている実務設計法と,法律的な,あるいは学問的な設計法を総合し,安全かつ経済的な基礎を設計するうえで,実務上もっとも便利な設計法は何かを示したものである.
ただし,基礎梁設計を必要とする複合基礎,布基礎,基礎梁付独立偏心基礎およびべた基礎については,RC関連事項として,続けて刊行した『実務から見たRC構造設計』(改訂中)にまとめている.
そのほかの本書の特徴は以下の5点である.

1. 構造設計の定石:実務経験から生み出された実務設計術をまとめたものである.
2. 実務図表:構造設計に必要な資料を使いやすい図表にまとめたものである.
3. 設計例:5階建程度の建物の実際の設計例をもとに作成し,計算手順の理解に役立てるとともに,設計参考資料としても役立つものとした.
4. 法令を網羅:関係する法令,告示,通達の要旨を掲載した.
5. 指針,規準を網羅:日本建築学会の規準・指針,日本建築センターの指針等の設計方法の要旨を網羅し,条件に応じ,採用すべき設計方法を示した.

これらは,建築主事として構造計算の審査を通して教えられたもの,巻末に記した参考文献より教えられたものである.関係の皆様に,この場を借り,お礼を申し上げたい.
また,本書は事実,『行政からみた建築構造設計』シリーズ(㈱建築知識刊)の続編であり,このような形で誕生できたのは,前シリーズが昭和56年の建築基準法令の改正にともない絶版になったあと,改訂するように励まして下さった読者の皆様のおかげである.
なお,本書は昭和62年より『建築士と実務』に連載した「実務から見た建築構造設計/建築基礎構造」に,大幅に加筆訂正したものである.連載の機会を与えて下さった『建築士と実務』編集部(㈱オーム社)にお礼を申し上げたい.
読者が本書を「礎」として,地盤に適した基礎の設計を行われるように願うとともに,より良き設計法の確立のために今後ともご指摘,ご叱正をお願いいたしたい.
おわりに,本書をまとめるにあたって,並々ならぬ援助をいただいた学芸出版社,とりわけ前田裕資氏に感謝する.

上野嘉久

改訂版にあたって

平成元年に誕生して17年,8刷を数え,多くの方々に御活用いただいた.
平成12年にはSI単位に基づく建築基準法令の改正,新たな告示も発せられ,日本建築センターの指針改訂,さらに学会規準においても性能規定型の『建築基礎構造設計指針』(2001)が発刊され,基礎に関する文献が多岐にわたり,構造設計に苦慮するというのが現状である.
そこで,本書は守らなければならない法令・告示を基本にして全面改訂した.
労多き実務書の編集は森國洋行氏によるもので,二人で本書は誕生した.
末永くお役に立つことを祈ります.

平成17年師走
上野嘉久

正誤情報=改訂版第1刷~第4刷

PDFで表示

『基礎工』((株)総合土木研究所)2006.3

構造設計が基礎も包含した一貫設計プログラムによって行われている現状に対して日頃から疑念を抱いていたものであるが、遂に、この一貫設計プログラムを悪用した耐震設計儀装事件が平成17年11月に起きてしまった。一個人の起こした事件とはいえ構造設計者は複雑な思いに駆られていた。事件の冷めやらぬなか本書に出会い、活きた数字が目で追えることの喜びで何か爽やかな安堵感を覚えた。本書はコンピュータ主流の構造計算の流れの中、ブラックボックスからの脱却を試みる勇気を与えてくれるし、構造設計の手法を再考させるためには最適書となるように思える。長年行政に携わった経験を生かした眼力と、実務に精通していることが随所に満ち溢れており、若い実務者にとっては絶好の参考書となるものと思われる。更に、本書で特筆すべきことは、筆者も記しているように実務経験から会得した設計術を構造設計の定石として纏めていることと、超高層等の大規模建築でなく社会に広く存在する一般的な建物を対象にしていることで、堅苦しい技術書からの脱却を図っていることではなかろうか。

本書は最新の建築基準法、建築学会規準、SI単位に対応している。内容は、基礎と地盤、地盤調査、基礎構造の選定、地盤の許容応力度、地盤改良の設計、沈下量の検討、杭の許容支持力、地震力に対する基礎設計、基礎スラブの設計、基礎梁付偏心杭基礎、栗コン・埋込み基礎の11項目から構成されている。各項目それぞれに計算式の記号や符号について詳細に分かり易く解説し、それに対応して設計例が丁寧に計算されているので理解をより深めることが出来る。また、それぞれに計算図表が豊富に添付されているので実務的には非常に便利に利用できる。基礎の設計変更は設計監理業務では比較的多く発生するが、本書は工事の進行段階において変更設計を行う待ったなしの現場作業に対しても即対応できる実務書でもある。基礎設計で日頃疑問を抱いている事項に関してもタイムリーに解説されているので読者を満足させてくれる実務者必携の技術書ではなかろうか。
構造設計で電算を否定するのではなく、本書に掲載されている計算式をExcelなどにプログラミングして利用すればブラックボックスから脱却でき別の楽しみ方が生じる。

(世良耕作)

『建築技術』((株)建築技術)2006.3

最近、構造設計の信頼性を揺るがす事件が起こりました。事件を通して、構造設計の重要性が再認識されたと思います。さて、今回紹介する本書は、著者が建築主事時代に、確認申請の構想計算書の審査を通して知り得た実務的設計法の経験を、力学的・法律的な裏付けを行いながら「基礎構造設計」についてまとめたものです。

本書の特徴は、法令や指針、規準を網羅しながら、「構造設計の定石」で実務経験から生み出された実務設計術をまとめ、各種基準ごとにバラバラだった図表を「実務図表」として項目ごとにまとめています。また、「設計例」では、5階建程度の実際の設計例をもとに作成し、計算手順の理解に役立てるとともに、設計参考資料として役立つものとしています。

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