地模様としての建築

吉村篤一

四六判/240頁/定価 本体2300円+税

表紙   都市の地模様を構成する要素「家」は、さまざまな個性を持ちながらも明確なコンテクストで貫かれていなければならない。20余年にわたり、京都を中心に住宅を設計してきた著者が求めてきたのは、「地」をかたちづくり、町並みという「図」をおりなす住まいであった。
  その設計手法の源流を、本文と52の住宅作品からたどる。

「地」をかたちづくり
風が通るすまいとは……


著者略歴

吉村篤一(よしむら とくいち)





あとがき

  事務所を開いてから23年目になる。あまりたいした仕事はしていないが、依頼された仕事は断らず、どんな仕事でもこなしてきた。そのおかげで、今日まで事務所を続けてこられたのだし、ひとつでもやらなかったらどうなっていたかわからない。とにかくずっと綱渡り的な状態で、20数年が過ぎたのである。その間、最も多かったのが個人住宅である。件数としては約70軒ほどで全体の仕事の七割程度になるだろうか。「ほんものの家」とか「地模様の建築」とかいいながら、そのつど住み手のための住生活空間のあり方を探り続けてきた。その中から資料の揃っている52軒を取り上げてみたのだが、はからずも一番最初と最後が松ヶ崎の家となってしまったのは、何かの因縁なのだろうか。

  また、本来の設計の仕事以外に、件数は少ないが、原稿の依頼があったときも断らずに書いてきた。もともと文章を書いたり話をするのは大の苦手であったから、自分からは進んでやらなかったが、依頼されると訓練だと思って引き受けてきた。これも20年以上経つと相当数になってくる。

  数年前から機会があれば何らかの形でまとめてみたい、と思っていたのだが、今回、奈良女子大学へ赴任するための書類をつくらねばならない機会が巡ってきた。生来、私は非常に消極的な性格で、よほどのことがない限り自分から進んで何かをするといったことはなかったが、今回もそういった要請があったので、今までの作品と文章の整理をすることができたのである。そこで、ちょうどよい機会だと思い、清水の舞台から飛びおりる気持ちで学芸出版社にお願いし、一冊の本にまとめてもらうことにしたのである。作品のほうは、図面と写真およびデータなどをまとめた。文章のほうは内容がばらばらで、一冊の本として筋が通らず、編集者を悩ませてしまった。また拙文のため加筆、訂正、省略をしたり、また組み替えを何度も行ない、何とかこのような形までこぎつけてもらったのである。しかしなお、同じ内容の繰り返しがどうしても残ってしまった点はご容赦いただきたい。担当の永井美保さんにはたいへんご迷惑をおかけした。度重なる変更や訂正に対して快く対応していただき、感謝の意に耐えない。全体の構成や写真の選択などは、事務所の荒木公樹君に多大な協力を頂いた。また、図面作成や写真のレイアウトは奈良女子大学の渡辺奈々さんの手をわずらわせた。この場を借りてお礼を申し上げたい。最後に、このようなつたない作品や文章を一冊の本にするという、厚顔無恥な依頼を聞いていただいた学芸出版社の京極迪宏社長に感謝の意を表する次第である。

  1998年8月

松ヶ崎の寓居にて 吉村篤一  





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