まちづくりロマン

書 評

『地方自治職員研修』(公職研) 2002.9
 筆者は冒頭、先進地に学ぶには「視察」ではなく、「取材」をしなくてはならぬとするが、その謎は本書を読む中で明らかにされる。塀割の埋立にたった一人で立ち向かった係長の話(柳川市)、米軍基地内に新庁舎を建てようと国の抵抗にあいながら村独自の対米外交でなした話(読谷村)など、わがまちではあり得るとも思えぬエピソードが並ぶ。しかし現状を見るだけの「視察」では見えなかった、ことの発端、人の思いが「取材」によって明らかにされ、わがまちと変わらぬ様子に驚かされよう。


『建築士事務所』((社)日本建築士事務所協会連合会) 2002.8
 まちづくりの原点、それは街への信念を貫くことのできる個人の情熱ではなかったか。
 本書は資金不足、法規制、まわりの反発など、立ちはだかる厚い壁を住民・行政との関係を模索し、築き上げながら乗り越えたまちづくりのドラマである。
 メタセコイアに永遠の芽吹き、花火とラジオが空を飛ぶ、町はパノラマ古今集の世界、沈んだ竜馬の船を探せ、水のない川に緑の親水公園、手づくり水車から石畳の宿へ、掘割にとり戻したどんこ船、百万都市にダムの町の領事館、百済の里に西の正倉院、米軍基地に村役場を建てた、と興味津々のドラマがいっぱい。楽しく読んで勉強になる一書。