資源エネルギーとランドスケーピング

あとがき

 様々な国や地域で、ガーデニングがすさまじい勢いで大衆の関心事となりました。この好奇心の爆発が一時の流行であれ、意義をもった発展であれ、ガーデニングそのものは純粋なことだと受け止めています。
 緑への関心は、私たちの住まいを取り囲んでいるエリアのすぐれた価値を見出すことであり、そのエリアが生活空間の可能性や愉しみの幅を大いに広げることができるということが、理解されてきていることの証です。そしてその意識が、多くのランドスケープアーキテクトやガーデンデザイナー、アマチュアのあいだで強まっているということの現われだとも解釈しています。
 一方、正しく成功するガーデンデザインは、現代的なライフスタイルに対応したアウトドアリビング(外の部屋)の本質を最大限に活用し、良い外観をつくりあげるものでもあるはずです。このことには、高い専門性が要求されます。これを怠ると、庭はばらばらなアイデアの寄せ集めとなります。そして庭のオーナーには、何の役にも立たない植栽とメンテナンスの悪夢をもたらす結果になるだけではなく、資源エネルギーの浪費にもなってしまいます。
 言い換えれば、成功するガーデンデザインには、生態学と緑の文化の正しい理解が欠かせません。しかし多くのランドスケープアーキテクトやガーデンデザイナー、環境設計、建築家、造園会社の専門家たちは、まだまだ訓練が不足しており、学ばなければならない課題が、多く残されているのが現状だと思っています。
 本書に書かれた、資源エネルギーとランドスケーピングの取り組みや活用は、21世紀には欠かせない技術です。私たちはより科学的に、気象条件や太陽、水、土壌、肥料、薬品、植物に関して、地域性を分析し、個々の暮らしに反映させる努力を重ねる必要があるはずです。私たちは昔から自然から学んできたし、これからもそれを忘れてはならないのです。
 この本の背景には、毎年アメリカで開催されるASLA(ランドスケープアーキテクト会議)をはじめ、専門的な樹木、農薬、水、開発、デザインに関する会議から私たちが学んだ多くのことがあります。そこには緑や水の管理、森林や土壌の調査分析の専門家、また大学の教育プログラムを通して優秀なデザイナーを育てている研究者たちが集まっていました。
 特に私たちにとって、アメリカで生まれたゼリスケープとの出会いが大きかったと思います。それは21世紀における資源エネルギーの活用保全のために緑が果たすべき役割をはっきりと示していました。その出会いがなければ、この本は生まれなかったでしょう。
 最後に、この本をまとめるために約5年以上に渡って各研究機関や大学、植物園、ナーサリーの方々から受けた情報や資料提供、そして研修に参加させてくれた州立ワシントン大学ランドスケープ学部、都市園芸センターのスタッフや教育プログラム関係者の出会いがあったことに感謝申し上げます。資料の分析を続けてくれた事務所のスタッフの協力に感謝したいと思っています。
 また、何より出版に際して、前田裕資さんを始め編集者の方々には、何度も議論を交えながら、この書籍の形態を見い出してくれたことに感謝申し上げます。
 この本が、私たちの暮らし、日本のランドスケープやガーデンに美と節約をもたらすことを期待するとともに、これからも資源や緑を見つめながら、私たちプロができることを追い続けていくことができれば幸いです。
小出兼久

もくじへ
はじめにへ
書 評へ

学芸出版社
『資源エネルギーとランドスケーピング』トップページへ
学芸ホーム頁に戻る