都心居住 都市再生への魅力づくり


あとがきにかえて……中筋 修さんを惜しむ


 本書はインターシティ研究会の出版物としては四号目である。第一号は『都市ストックを創る』、二号が『あそびが都市をつくる』、三号が『駅とまちづくり』とつづいた。どの号も、いくらか遊び気分が入っていたとしても、創立後一五年を迎え、ほとんどのメンバーが四〇代から五〇代になった中年会員の「マジ」な都市議論の成果だった。むろん、本号もマジで固い都市議論である。会員以外に大学関係から加藤、藤本の両先生、さらにユニークな地域活動で著名な国本喜之さんの参加を得たが、当初「都心」というテーマをめぐってかなりの混乱と議論があったことを白状せざるを得ない。というのは、わが国には都市論や都市分析書は山ほどある。しかし、都心について踏み込んだ検討や議論は少ない。昨今流行の都心回帰現象に合わせて都心万歳の太鼓を叩くほど若くはなく、とりわけ東京以外の地方中小都市(大都市・オーサカを含む)に住む者にとって都心とは何であろうか。正直いってピンと来ないのだ。
 一九九九年から二〇〇〇年にかけて、各々の都心について思いをぶつけ合った。このため時間をかなりかなり食ってしまったが、その議論も何度も言い古されたようないわば手垢のついた都心論の焼き直しか、「住めば都」論のような居住核論かあるいは都市文化論のようなものとなってしまう。研究会発足時からのメンバーであり、都住創運動のリーダー、建築家の中筋 修さん(六二歳)がこの混迷をあっさりと粉砕した。つまり、都心を意味論的にではなく、居住という機能論から位置づけるべきだというのだ。それ以来ふっきれたように議論の方向が見えてきたといってよい。
 それから数ヶ月間、執筆メンバー会議で議論を重ねて遅れながらもようやくまとまってきたものが二〇〇一年夏である。ところが、その秋に本書の刊行を見ることなく当の中筋さんが食道ガンで急逝された。
 本書の三分の一位は中筋さんの原稿である。その前年(二〇〇〇年)の秋、手術のため入院した病院先でも原稿を書いたはずである。都心に住み都市生活を楽しみ、しかも好きな住宅に住めるよう、中筋さんはこの二五年余りもの間、大阪市内を中心に(東京でも二ヶ所)グループ住宅づくりに没頭してきた。講演会やマスコミにも登場し独自の都市住宅論を訴え続けてきた。
 結果的に本書は中筋さんの最後のアッピールとなってしまったが、昔からの会員と共同執筆しながら彼なりに生をまっとうしたとするならば、都住創運動家・鋭い論客だった中筋さんに大変ふさわしいとも思えるのだ。
 彼の都心や住まいに対する理想は半端なものではない。読者諸賢も行間から彼の熱い熱い想いを感じて欲しいと思う。
永い友人の一人として
インターシティ研究会会員 大西靖生









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