都市に自然をとりもどす

市民参加ですすめる環境再生まちづくり

書評




造景 No.28

 公害地域として知られる大阪市西淀川区をフィールドに、市民参加による自然環境再生活動の経過を紹介している。本書の特徴は、経過報告にとどまらず、一般市民が調査活動を行うための方法も解説している点だ。筆者たちの活動を追体験しながら、自然調査法の基礎がわかる編集がなされている。
 本誌でも、エコロジーパークやサンクチュアリの特集で取り上げたが、自然回復や保全に関する市民向けの平易な解説書が意外に少ない。市民運動として長年培われてきたものが、店頭に並んでいない。これまで、まちづくりの視点が不足していたためかと思われる。本書はそれを補う企画である。

地域開発 2000.8
 西淀川公害訴訟の和解にあたって、和解金の一部が西淀川区や他の公害地域での再生を支援するまちづくり活動に当てられることになった。
 本書は、この和解条項に基づいて患者と家族の会らによって96年に設立されたあおぞら財団からの呼び掛けにより行われた、「都市の中の小さな自然」を市民自らが取り戻そうとする運動の記録である。
 従来の公害反対運動が地域の環境に大きく貢献したことは確かであるが、行政・企業と市民との間の亀裂を生んだことも否定できない。急速な工業化や都市化は自然環境ばかりでなく地域社会にも大きな爪痕を残した。この問題を克服しまちを蘇らせることは、西淀川地区に限らず日本の多くの都市に共通した問題である。
 「まちづくりたんけん隊」に始まる西淀川の対話型まちづくり運動の取り組みは、これからのまちづくりを行おうとする地域にとって参考となるであろう。



学芸出版社
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