あとがき

   (社)都市計画学会地方分権研究小委員会は、地方分権推進委員会から第一次勧告が出される直前の時期にあたる一九九六年秋に活動を開始した。それ以降、地方分権推進委員会や都市計画中央審議会での議論の進捗をたどりつつ、学会大会における三回のワークショップ開催、東京と大阪での座談会の実施、学会員に対するアンケート調査など様々な活動を実施してきた。各々の活動に対して、多数の方々のご参加・ご協力を賜り、地方分権と都市計画の今後のあり方について実りある議論が展開できた。また、アンケート調査からは、地方分権と都市計画をめぐる大きな潮流の変化の中で、都市計画の専門家の方々が、既存の仕組みのもつ様々な問題点について日々具体的に考え悩みつつ各々の現場で仕事をされていることを窺うことができた。熱心に御議論頂いた皆様方にまずここで感謝申し上げたい。
 そもそも、「都市計画の地方分権」というテーマには、広範な課題が関わっている。小委員会で取り扱ってきた課題も、単に都市計画法令体系のあり方、国と地方の役割分担のあり方などの問題にとどまらず、個別の補助事業のあり方、行政・財政システムに関わる問題、都市計画税のあり方、住民参加や情報公開のあり方などの個別のテーマから、地方自治の本質に関わる課題あるいは今後の「都市計画」そのものの行方とは、といった極めて大きな課題に至るまで、広範なものにわたった。小委員会内部の議論も常に白熱したものとなり、議論が対立し、平行線をたどる場合もかなりあった。このため、必ずしも全ての課題について小委員会で十分議論を尽くせたとは言い難い面もある。
 それでも、我々は、こうした議論の成果を学会内部のみで埋もれさせずに、都市計画に携わる多くの人々に広く提供したいと考え、小委員会が特に重点をおいてきた論点に絞って取りまとめることとした。我々の編集趣旨は、まえがきと本文をご覧頂ければご理解頂けるものと思うが、ここでは、次の点をあらためて強調しておきたい。それは、本書では、小委員会で積み重ねてきた議論を集約したメッセージとして提示しようとするものではなく、むしろ特定の立場に偏らず議論の過程そのものを提示することにより、このテーマに関わる様々な論点がより明確化され、また議論内容の多様性と奥行きの深さが伝わることを意図した。したがって、我々は、本書がこれから実際に進行してゆくであろう「都市計画の地方分権」を考えるときの手がかりとなることを期待している。
 出版にあたって、小委員会メンバーの他、多数の方々に非常に短期間にご執筆を頂いた。深く感謝致します。また、当企画のとりまとめやこれまでの小委員会の様々な活動にご協力頂いた多数の方々にも、ここであらためて御礼申し上げたい。また、学芸出版社の前田裕資氏には、我々の活動主旨をご理解頂き出版を快く引き受けて頂くとともに、本書のとりまとめに際しても多大なご協力を賜った。深く感謝する次第である。

(社)日本都市計画学会地方分権研究小委員会 大村謙二郎、有田智一


学芸出版社/gakugei

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