徹底解説「大改正」建築基準法

2000年版


はしがき


 平成10年6月12日、改正建築基準法が公布されました。主な内容は、これまでも言われていたように、建築行政の民間開放、建築基準(単体)の性能規定化が主なものです。そのほかにも、連担建築物設計制度とか準防火地域における木造三階建共同住宅の解禁というような市街地建築物規定の改正も含まれています。
 今回の改正のポイントは、これまでのような具体的な建築基準の強化ではなく、建築行政のシステムの改革にあります。従って、今回の改正内容がすべて施行される平成12年6月には、これまでの建築基準法令とは、かなり異なった内容の法令集となってしまうことでしょう。法令の内容が、技術的な建築基準を主体としたものから、手続きを主体としたものへと改められて行くからです。
 そして、これまでの主体であった具体的な建築基準(仕様規定)は「建設大臣が定めた構造方法」としておそらく告示として示されることになるのではなかろうかと、予想されます。
 さらに何よりも面倒なのは、今回の改正が第1条から第3条までに区分されていて、第1条は公布の日から即日施行、第2条は平成11年5月1日(公布の日から1年以内)施行、第3条は公布の日から2年以内の施行とされたことです。これは3回にわたる改正を一つの改正で済ませたようなもので、改正内容を事前に周知させる効果はあるものの、法令集では一度の改正で済ますことができず、3回も改正しないと今回の改正を吸収しきれないことになります。また、第3条(性能規定化)に伴う政省令や告示の改正も現段階では内容が判らない状況です。従って、平成12年の施行日近くまで待たなければなりません。
 このような理由で、今回の改正は、建築基準法の施行(昭和25年)以来、50年ぶりの大改正といわれており、建築界の関心も大きいわりには、具体的にどう変わるのか、どう対処したらよいのかが、今一つ判りにくい状況にあります。
 そこで、本書はこの大改正をより正しく理解していただくため、これまでの〈読みこなすコツ〉シリーズの姉妹書として緊急出版することと致しました。とは言え、先に述べたように第3条(性能規定化)に関連する政省令の制定がこれからですので、内容的には必ずしも充分とは言えないかも知れません。かといって出揃う平成12年まで待つ訳にも参りません。
 とりあえず、現段階で勉強できる範囲で、改正法のねらい、方向を学んでおき、後から出る政省令で骨格に肉を付けて行くことが大切ではなかろうかと思います。
 その意味で、今回は先に刊行した〈改正・初年度版〉に追補して、第1条及び第2条に関する改正内容までを集録し、第3条に関する部分は、順次、政省令の公布を待って内容を充実させ、続刊を出して行きたいと考えています。
 新しい建築基準法の理解と普及に少しでも役立てば幸いです。

   平成11年5月(初年度版を改訂するに当って)

高木 任之


学芸出版社
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