図解 間取りの処方箋
暮らしから考える住宅設計・改修のポイント

はじめに

 週末に向けて、新聞に折り込まれるチラシといえば、家電量販店、ショッピングモール、スーパーマーケット等と並んで多いのが不動産関係のチラシでしょう。その多くは休日を利用してモデルハウスや土地を見学に行く人に向けたもので、住宅展示場のイベント情報もあれば、ハウスメーカーや地場の工務店、ビルダーの建売物件や売り土地の情報、不動産屋さんが取り扱う中古、賃貸物件の情報など、掲載されている内容も多岐にわたります。
 例えば、建築条件付き100u(30.2坪)の参考プランが掲載されているチラシの間取りに対して、購入する必要や予定がないのに、このリビングは狭い、子供部屋は4.5畳もあればよい、2階にトイレはいらないなどと突っ込みを入れている人が多く存在することをご存知でしょうか?
 掲載されている土地情報は面積と方位程度で、用途地域(建蔽率、容積率)の記載もなければ、接している道路幅員、土地の高低差、周辺環境の情報もなく、何より想定している家族構成も書かれていません。
 そのような間取りをチェックしても、自分の理想に合うはずもなく、空しいだけですが、お客様の意向をくむ必要もなく、自由にプランニングできるはずのモデルハウスで、なぜこんな間取りになる?と首をひねる例の多いことがわかります。
 本書ではそんな間取りに対して、「間取り女子」が問題点をあぶり出して、「設計課長」が処方箋を発行するという手法で改善した間取りを39例ご紹介しています。間取りを全て変更するのでなく、極力外形を変えずに部分的な変更に留めることで、新築住宅の設計者だけでなく、リフォームの設計にもお役立ていただける内容になっています。また、本書は2017年に私が執筆した、『図解住まいの寸法 暮らしから考える設計のポイント』の実践編としてもお使いいただける内容で、「住まいの寸法」をより深く理解できるようになっています。合わせてご活用いただけると幸いです。

堀野和人