建築構造力学2


まえがき

 構造力学は,外力が作用したときの建築構造物の挙動を知る上で必要不可欠である.外力は,主として柱,梁,壁,床などの構造部材を通って地面に到達する.これら部材の中を伝達する力と,そのときに部材に生じる変形を求めるのに,構造力学が有用である.また,建築構造物は大規模であるし,一品生産物である.それゆえ,造っては壊してみて安全なもの,よりよいものにしてゆくというのは難しい.だからこそ,安全で経済的な建築構造物を造るためには,建築構造力学が重要なものとなる.
  本書は『建築構造力学T』の続編として,同じ執筆者でまとめたものである.内容は,1.部材に生じる応力度と変形,2.骨組みに生じる力と変形,3.マトリクス法,4.終局強度,5.座屈,6.構造解析から構造設計へとなっている.コンピュータ利用を意識してマトリクス法を平易に解説するとともに,構造力学による構造解析が構造設計へと,どのように連続してゆくのかに関しても記述している.
  本書では,静定構造物のみならず不静定構造物を対象とした建築構造力学を理解するために,例題・図・写真を豊富に示して説明している.
  『建築構造力学T』は,静定構造物に対する力学を学習できるように構成されたものであった.本書『建築構造力学U』の内容を理解する上で,静定構造物の力学の知識を体得していることが望ましい.本書の1.では『建築構造力学T』の中で最低限必要となるであろう項目をまとめているので,ここから読み進めてほしい.
  本書が読者の勉学の一助となることを切望する.

2005年10月
執筆者を代表して 坂田弘安