建築構法
わかる建築学5

まえがき

 建築物は遠い昔から人間の生活や活動の場(空間)として不可欠なものである.そして建築の構造は,地域によって,また,時代によって異なってはいるが,基本的には柱,梁,壁,基礎などで構成されている.これらの構成要素をたくみに組合せることによって,建築物に作用する種々の荷重・外力に対して安全性を保つ努力がなされてきた.そして,そうした努力の積重ねによって現代のすぐれた建築構造の構法が生みだされてきたのである.
 本書では,こうした現代の建築構法のうち,近年,大規模建築物にも使用され始めている「木構造」をはじめ,近代建築の代表的な構法である「鋼構造(鉄骨構造)」及び「鉄筋コンクリート構造」を中心としてそれらの構法の基本的な概念と構造設計及び構造計算法について建築学の初学者にもわかるように平易にかつ詳しく説明がなされている.
 次に,そうした建築構造物を支える「地盤」の基礎知識や,「基礎構造」に関する種々の構法についても紹介している.また,本書の後半では,建築物の「各部の構造的特徴」を記述し,建築物の伝統的な構法の知識を深めることも意図している.さらに,建築構法の最新の技術の紹介として,「空間構造(大スパン構造)」,「免震・制振構造」,「耐震診断・耐震補強」について記述している.
 以上に述べてきたように,建築構造の技術は非常に多岐に亘っているが,建築の設計や施工に携わる人は,一通りこれらの建築構法に関する知識の修得が要求されるのは当然のことである.本書の執筆者等は,こうしたことを踏まえ,建築構造設計を志す人のみならず,建築に携わる多くの人々が理解できるよう,なるべく平易に記述することを心がけている.
 特に建築士試験の構造系科目の出題内容を理解できる基礎的知識が身に付くよう配慮している.
 本書シリーズの既刊「わかる建築学4 建築構造力学」とあわせて活用されることを望む次第である.
 本書の構成は15章だてとなっている.各章の末尾に理解度を高めるための基礎的な練習問題(解答付)を設けているので,有効に活用いただければ幸いである.

執筆者一同