〈二級建築士受験〉

5日でわかる構造力学


ま え が き



(1)本書の特徴
 本書は、二級建築士の合格を目指す皆さんが、構造力学の問題を1問でも多く正解できるように、新たな視点でまとめた受験対策本です。
 ご存じのように、学科試験は計画、法規、構造、施工の4科目に対し、合計60点(足切りライン13点)で合格します。平均15点とれば合格できるはずですが、平成14年度の実績は、受験者38,867人のうち合格者12,424人で、合格率は約32%でした。例え合計が80点であっても、1科目でも13点に満たなければ合格できないので、構造でつまずいた方も多かったようです。本書は、始めての受験者だけでなく、受験経験のある方が構造力学を学び直し、合格するための「あと1点」を確実にできるよう、見て・読んで・解いて分かる一冊を目指しました。

 本書の特徴は、
@平成元年から14年までのすべての過去問を網羅しています。
 14年間で計100問の問題を、説明用の練習問題と確認用の復習問題に振り分け、すべてを解説しました。
Aすべての過去問の出題年度と出題番号を明らかにしています。
 各問題の末尾に(H14−1)というかたちで、出題年度と出題番号を表記しました。一部、昭和の問題と過去問以外の問題もあります。
B問題を解くために必要な、基礎的な知識を充実させています。
 難しく思われがちな構造力学の仕組みについて、できるだけやさしい言葉使いで、図も多用しながら丁寧に説明しました。
C出題のない分野は、一切、説明していません。
 構造力学として重要な知識であっても、14年間に一度も出題がない分野については、一切の説明を省きました。
D1日30数ページ、5日ですべてが見えてきます。
 過去100問の問題をテーマごとに整理し関連づけなら、5日で読み解くことができるように工夫しました。これ一冊で、平成時代の構造力学の全貌に接することができるでしょう。

(2)構造力学の出題傾向
 構造の25問中、構造力学は1問目から7問目までに出題されます。平成元年だけは昭和の名残を受けて9問でしたが、平成2年以降は7問で定着しています。この7問の出題分野と出題順はほぼ固定されており、次ページに示した一覧表から、次のような出題傾向が分かります。

第1問:用語と単位/力のつりあい
 構造力学に関する用語とその単位を問う問題が9問、基本的な力のつりあいに関する問題が6問出題されています。
第2問:断面二次モーメント
 断面二次モーメントの計算が、かたちを変えながら毎年出題されています。中空断面5問、長方形4問、みぞ型3問、H型2問です。
第3問:はりの曲げ応力度とその応用問題
 最大曲げ応力度の計算が6問、その応用問題として部材長さを求めたり、荷重を逆算する問題が7問出題されています。
第4問:はりの反力と応力
 反力計算が5問、曲げモーメントの計算が7問、せん断力に関する問題が3問出題されています。
第5問:ラーメンの反力と応力
 反力計算が5問、曲げモーメント図に関する問題が5問の他、剛比やせん断力についても出題されています。
第6問:トラス
 形態別に見ると平行弦トラス8問、傾斜トラス6問ですが、解法別では切断法が9問、節点法が4問、出題されています。
第7問:座屈
 座屈荷重の式について4問、座屈荷重の大小を問う問題が4問、座屈荷重の係数計算が4問、座屈長さについて2問出題されています。
 この他に、はりのせん断応力度やたわみなど、出題頻度の低い問題もいつくかあります。

 (3)本書の構成
 本書は、出題傾向を踏まえながら関連する過去問を5つの章に整理し、1日に1つずつ学べるようにまとめました。1つの章は、関連する2つの分野からなり、分野ごとに講義→練習問題→復習問題→補講、という基本的な流れを作りました。

1日目:力のつりあいと反力
 第1問の力のつりあいと、第3問から第6問に共通な反力計算を1つにまとめました。つりあい条件式と力の仮定は、反力計算の基本です。特に、出題数の多い単純ばり系骨組の仕組みと反力計算を中心に説明を進め、偶力のモーメント、分布荷重の合力、片持ばり系骨組の説明 は補講扱いにしました。

2日目:曲げモーメントと曲げ応力度
 第4問の曲げモーメントと第3問の曲げ応力度を一つにまとめました。出題順と逆ですが、曲げモーメントへの理解がなければ、曲げ応力度を求めることができません。やはり、出題数の多い単純ばりの問題を中心に説明を進め、片持ばりの曲げ応力度は補講扱いにしました。

3日目:トラスの解法
 3日目は第6問のトラスだけでまとめましたが、切断法と節点法という解法別に復習問題を分けています。特に、切断法を分力法とモーメント法の2つに場合分けしたのは、本書の特徴の一つです。
 トラスを解く前提として、軸方向力の知識は欠かせません。そこで、解法の説明前に軸方向力の説明を丁寧に行い、関連する用語の解説を章末につけました。

4日目:断面二次モーメントと座屈
 第2問の断面二次モーメントと第7問の座屈を1つにまとめました。通常、それぞれが独立した分野として扱われますが、曲げ剛性を共通のキーワードに、一方はパターン化された断面二次モーメントの計算問題として、もう一方は曲げ剛性が現れる具体的な応用問題として位置づけています。剛比やたわみの問題も、断面二次モーメントや曲げ剛性との関連から説明するため、4日目の補講で扱いました。章末に関連する用語の解説とその問題をつけています。

5日目:曲げとせん断力/ラーメンの応力
 第4問のせん断力と第5問のラーメンを、曲げモーメント図との関連から1つにまとめました。共通するキーワードは純曲げと横曲げです。他にせん断力では、第3問に1つだけ出題のあるせん断応力度を、せん断変形の組合せから数式を使わずに解説しています。また、3ピンラーメンの反力は、つりあい計算の他に図解法による簡便な解き方を紹介しました。5日目と直接関係しませんが、章末に用語の解説とその復習問題をつけています。

※第1問の用語と単位の問題は、単なる暗記問題とはせず、重要な用語に関する解説を充実させました。軸方向力に関係する用語を3日目に、断面二次モーメントに関係する用語を4日目に解説し、残りの用語と出題傾向を5日目にまとめました。
※すべての復習問題に解答欄を設けました。練習問題や解答欄にあるヒントを参考に解いてください。巻末に回答と解説が掲載されています。解き方が複数ある場合、重要な問題には別解をつけました。
※練習問題に限らす、文中に出てくる計算式は、途中計算を省略しています。式の立て方や計算の流れを確認するためにも、余白を利用するなどして、一度は必ず自分で書き取ることをお勧めします。
※基本的な単位の表記はSI単位に統一しましたが、平成8年以前の問題は当時のままに、重力単位で表記しています。