一級建築士合格戦略 法規のウラ指導


はじめに

 本書の前身である『一級建築士受験 法規のウラ指導』は,2005?2015年の10年間,出版されました.その間,実際に一級建築士試験の法規科目の点数が稼げる本として,数多くの合格者を輩出してきました.しかしながら,毎年の法改正に対応させるなど,執筆・編集の業務負担はあまりに大きく,2015年度版をもって出版を断念することになりました.ところが,口コミによって本書の評判は広まり続け,2015年版については過剰なプレミアがつき,また出版社にも再販を望む声が数多く寄せられたこともあり,2018年にリニューアルした形で出版する運びとなりました.
 本書で勉強することによって,本番で点数を稼げるようになる理由は2つあります.
 1つは,建築法規について体系的に理解できるようになること.そのために,法令同士の比較や併読がしやすいように工夫した構成・解説となっています.もう一つは,出題者が求めているモノを的確に読み取れる能力が身につくこと.本書で勉強する際には,解説を丸暗記するのではなく,問題作成者がどのような意図で,その問題を出題しているのかを丁寧にくみ取るようにしてください.
 上記の2点を意識しながら本書で勉強していただければ,試験本番で法令集を開く時間を少なくでき(=時間の短縮),かつ,得点力を劇的に高めることができます.
 一方,「遠回りな方法だ」「丸暗記の方が近道だ」と考える方もいるかもしれません.しかし,最近の学科本試験問題を見ると,問題作成者が明らかに「詰込み丸暗記型」の受験生を振るい落とそうとする意図が読み取れます.この傾向は,学科試験だけでなく,製図試験においても強まっています.過去問がそのままの形で出題される小テストや模擬試験と異なり,本番では「詰込み丸暗記型」の勉強法では点数を伸ばせません.どれほどインプット量を増やそうとも,身に着けた知識を的確に引き出せるアウトプット力がなければ点数を稼げないからです.試験元はその能力を受験生に求めています.事実,猛勉強したのにあと一歩のところで合格点に届かない不合格者が非常に増えています(=アウトプット力不足が敗因).
 学科試験全般について言えることですが,過去問は最低限20年分はマスターする.ただし,知識を丸暗記するのではなく,知識どうしの関連性や繋がりを常に意識しながら体系的な理解を目指す.その上で,問題作成者の出題意図を丁寧にくみ取る訓練を重ねていく.
 これらを効率的に実践できる点に本書の価値があります.
 本書を通じ,本番で点数を稼げる快感を一人でも多くの受験生に体感していただき,合格への道標のひとつとなれば幸いです.

2018年5月 著者