強い地元企業をつくる
事業承継で生まれ変わった10の実践

おわりに

 最近「SASI DESIGNはどのような会社ですか?」と尋ねられると、迷わず「地方創生をする会社です」と答えるようにしている。私自身の事業も地元を良くしたいという想いで始めたが、地域資源と事業者のやりたいことを結びつけるアイデンティティデザインという独自の手法で様々な地域を訪れ、様々な事業者と話をする中で、その確信も生まれた。
 毎日のように事業者の相談を受ける中で、「御社のやりたいことはこういうことですよね?」と話すと、目の輝きが変わってくる。そこでは決してアドバイスはしない。経営者の思いの丈を受け止め、引き出した情報を整理し「こういうことがしたい」と自覚してもらうだけでも、やる気に満ち溢れることが多い。
 私はいつも経営者に「私の中には成功の答えはありません。今は苦しいかもしれませんが、その答えは必ずあなたの中にあります」と伝える。
 苦しくても、自分自身と、その置かれた地元の環境と向かい合って出した答えが、必ず売上げへと結びついていく。そしてその経営者は大切な地域に還元する。
 まちづくりの観点から考えると、地元を継続的に良くしていくプレイヤーは間違いなく地元企業である。
 私の力では広くてなんともならない日本全国に、アイデンティティデザインという地元企業の覚醒を促すメソッドで、日本全体を地元企業から良くするために仕事人生を捧げたい。
 本書の制作にあたり、忙しい日々の業務の中、インタビューを通し実体験をお話しいただいた企業の方々、但馬信用金庫の宮垣健生氏、多可町商工会の後藤泰樹氏、本庄尚哉氏、また観光の観点から本書に寄稿いただいた日本旅行総研の桂武弘氏、鞄本旅行の久下浩明氏に感謝したい。
 最後に本書出版のきっかけを作ってもらった深水浩氏、そして初めての執筆に辛抱強く指導くださり、企画をまとめあげてくれた学芸出版社の中木保代氏と松本優真氏に心より感謝申し上げたい。
 まだまだ理想にはほど遠いが、今からやらないと間に合わない。
 すべての企業が変わると、日本全体は確実に変わる。
 自分のまちは、自分でデザインする。

慨ASI DESIGN 近藤清人