サステイナブル都市の輸出
戦略と展望

おわりに


 2007年に設立された社会人大学院である東大まちづくり大学院、通称「まち大」は、学術的な教育・研究という基本的なスタンスを保ちながら、最新のまちづくりの動向を、講義・演習やセミナーで取り上げ、外部の専門家を多く招き知見を深めてきた。まち大を運営する都市持続再生学寄付講座は、のべ20社近くの寄付企業の寄付によって支えられてきた。これまでまち大の運営にご協力頂いた全ての個人や企業・組織の方々に、厚く御礼を申し上げたい。

 本書は、「東大まちづくり大学院シリーズ」の5番目の刊行物となるが、今回新たに書籍全体として国際化・グローバル化を取り上げたことには特別な意味がある。これまでまち大では、海外の事例を研究・調査し参考にすることは多くても、フィールド自体を国外に設定することは、まれであった。もっぱら日本の都市づくりが抱える課題・問題を、さまざまな切り口で報告・議論してきた。

 しかし今や、日本の都市づくりも国際化・グローバル化と切っても切り離せない。まちづくりの需要が、これから成長し都市が拡大していくアジアをはじめとした新興国・途上国でより大きくなっていることは、否定できない。日本のまちづくりの仕組み・手法・ノウハウが、国外の他の都市でも有用なユニバーサルなものなのかが、本格的に試され、評価されようとしている。

 そしてその評価は、日本の都市自身にも跳ね返ってくるだろう。世界の都市が比較され優劣が評価される傾向が強まっている。機能だけでなく、住みやすさ・心地よさといった要素も含めて、世界基準で評価される時代になっている。

 できれば、日本の都市づくりのすばらしさが、日本人の単なる思い込みではなく、世界の都市生活を向上させることを示したい。そのためには、実務者も研究者も、海外に出て日本の制度・技術・ノウハウを伝え続ける必要があるだろう。

 「サステイナブル都市の輸出」は、このような努力によってはじめて達成されるものと考えられる。まち大もそのことに貢献できればと願ってやまない。
 最後に、本書の企画から刊行までご尽力頂いた学芸出版社の井口夏実さんに、監修者・編者・著者を代表して深く感謝の意を表したい。
2017年2月
瀬田史彦