ぼくらがクラウドファンディングを使う理由
12プロジェクトの舞台裏

 この本の出版企画がスタートしたのは、2013年の初め頃だったと思う。

 当初は、クラウドファンディング市場の規模や国際比較のように、統計情報を多く採り入れた白書的なものを目指していた。しかし、進めていくなかで量的な現状把握をメインにすることは得策ではないと思い至った。新たなサイトが把握できない程たくさん登場し、そして消えていく。一時点の状況を何とか切り取っても、その情報はすぐに風化してしまう可能性が高かったからだ。

 歳月を経ても変わらないものはなんだろうか? それは、人の考え方や感情だろう。何を考え、何に迷い、心惹かれたかは、時代が移り変わってもそう大きく変わらないはずだ。そのことを念頭に、成功者の意思決定の流れを丁寧にすくいとる方針に軌道修正していった。目指したのは、クラウドファンディングという言葉が聞かれなくなるような未来まで残り続けるクラウドファンディングの本だ。

 結果、出版まで数年かかったが、約5年間の事例を俯瞰することができた。日々ダイナミックに変わる状況のなかで「変わらない人の気持ち」が少しは浮き彫りにできていたら嬉しい。

 本書がようやく日の目を見るのは、原稿の確認、やり取りに何度も協力くださったインタビュイーの皆さん、また、趣旨を理解し情報提供に協力くださった各サイト事業者の皆さんのおかげだ。また、大竹文雄先生、大阪大学超域イノベーション博士課程プログラム、日本学術振興会、そして担当編集者・岩切江津子さんにはさまざまな場面でお力添えいただいた。この場を借りて、深く感謝の意を表したい。

2016年3月 佐藤大吾・山本純子・佐々木周作