スマート・テロワール
農村消滅論からの大転換


はじめに

1章 成長余地があるのは農業・農村──食料自給率の逆説

1 日本農業の潜在需要と伸びしろ
2 農村・農業のお寒い実態
3 供給過剰時代の農業の四つのジレンマ
4 新たな自給圏「スマート・テロワール」構想
5 自給圏で加工場を持つ効果
6 スマート・テロワールは日本の難問を解決する

2章 「瑞穂の国」幻想を捨て、スマート・テロワールを構築する

1 「瑞穂の国」幻想を捨てる
2 人こそ農村の最大の資源
3 加工食品メーカーと競争する
4 供給者主導の市場経済から消費者主体の経済システムへ
5 イノベーション・トライアングルへの挑戦
6 スマート・テロワールへのビジョンを描く

3章 スマート・テロワールの思想

1 不足から過剰へ──時代の転換
2 トーマス・ライソン『シビック・アグリカルチャー』
3 重商主義と重農主義
4 カール・ポランニー『大転換』
5 日本とヨーロッパ、食料過剰時代への対応の違い

4章 スマート・テロワールと地元愛

1 ワールドカップ・フランス大会で「最も美しい村」に出会う
2 「フランスで最も美しい村」協会の歴史と心
3 「美しい村」に通じる「世界遺産」の心
4 日本の「最も美しい村」連合の使命
5 スマート・テロワールが再ローカル化の要

5章 スマート・テロワール構築の鍵──地域の身の丈に合った食品加工場で珠玉の製品を作る

1 スマート・テロワール実現の手順
2 コスト積み上げの発想を変え、コスト・ゼロを見つける
3 マーケティング戦略の出番
4 日本の製造業が開発したノウハウを農村に導入する

6章 スマート・テロワール構築のマニュアル

1 「スマート・テロワール構築準備会」の創設
2 「農村計画図」作成でビジョンを見える化
3 スマート・テロワール内における基礎的な事業展開
4 数値目標の設定
5 従来農地の転換

7章 スマート・テロワールを支える仕組み

1 地域の食産業システムの改革をリードする大学の使命
2 自給圏には、地域に応じたプラットフォームが必要

8章 農村の文明開化──ドイツとオーストリアに学ぶ

1 メルケンドルフ
2 レッテンバッハ
3 ギュッシング
4 未利用資源の徹底活用
5 日本の最大の未利用資源は「人材」

9章 アルカディアへの道

1 一九九〇年以降の日本の課題──デフレスパイラルからの脱却と一言で言われますが?
2 「八百万の神」の宿る里山資本主義を
3 アルカディアを夢から現実にするために

あとがき


スマート・テロワール文献紹介


末松玄六『中小企業成長論』(一九六一)
林周二『流通革命』(一九六四)
ジャン・ボードリヤール『消費社会の神話と構造』(一九七〇、今村仁司・塚原史訳、一九七九)
カール・ポラニー『大転換』(一九四四、野口建彦・栖原学訳、二〇〇七)
トーマス・ライソン『シビック・アグリカルチャー』(二〇〇四、北野収訳、二〇一二)
エリック川辺『草地の生態系に基づく放牧と酪農経営』(二〇一一)
宗田好史『なぜイタリアの村は美しく元気なのか』(二〇一二)
ナヤン・チャンダ『グローバリゼーション 人類5万年のドラマ』(友田錫・滝上広水訳、二〇〇九)
山本義隆『一六世紀文化革命』(二〇〇七)
福澤諭吉『文明論之概略』(一八七五)

スマート・テロワール補論

シングルマザーの帰郷で「農村再生」
「テロワール」とは
農村の自立を阻んできた「瑞穂の国」幻想
農業基本法が変えた讃岐うどんの原料小麦の産地
日本農業のSWOT(強み・弱み・機会・脅威)分析から見えてくるもの
もはや「工業立国」ではない日本
契約栽培のススメ
カルビーの鮮度戦略の父、ミルトン・V・ブラウンさんのこと
既存システムを破壊することから始まったカルビーのポテトスナックビジネス
鰹ャ泉商店から学ぶ三つのイノベーション
福島県がスマート・テロワールの先頭に立つ
スマート・テロワールの住民の役割を考える
国産神話の罠
真善美
美味しいものは、どこで差がつくか?
もっとも精緻な農産加工品は「酒」
都市は「かせぎ」の場、農村は「つとめ」の場
軽井沢に見る都市の企業と農村