美味しい田舎のつくりかた
地域の味が人をつなぎ、小さな経済を耕す


おわりに


 本書の執筆にあたっては、二つのテーマがあった。
 一つは、現場のノウハウの地域連携である。これには、「高知県農業創造人材育成事業総合アドバイザー」(2010〜2014年)と「農林水産省地産地消普及拡大事業・企画委員会委員」(運営:財団法人都市農山漁村交流活性化機構、2010〜2013年)での経験が活かされている。これらのアドバイザーの仕事では、現場の関係者がお互いの現場を訪れ合宿し、ノウハウを学び、知恵の共有化を図ることを提案し、実現した。特に高知県の事業では、参加者に一人20本の質問を用意することを条件とするなど、成果を上げる工夫をした。そこで知りあったのが、本書に登場する池田牧場の池田喜久子さん、コスモファームの中村敏樹さん、山際食彩工房の山際博美さんである。
 もう一つは、六次産業の具現化に向けた足元からのサポートである。現在、六次産業化については国が支援し、各自治体で積極的に推進されているが、現実にはうまくいっていないケースが圧倒的に多い。販売先の開拓やメニュー開発など、六次産業化にあたってはさまざまなノウハウが必要となるからだ。本書で紹介した人と地域は、どこも等身大のひたむきな活動で成功を収めている。ぜひこれらの事例から、成功のヒントを掴んでもらいたい。
 本書の執筆にあたり、アシスタントを務めてくれたのは、長男の金丸知弘である。
 彼は、イタリア北部ピエモンテ州の人口6000人ほどのコスティリオーレ村にある「外国人のためのイタリア料理研修機関ICIF(Italian Culinary Institute for Foreigners)」で料理を学んだ後、ミシュランの一つ星レストラン「Ristorante Guido da Costigliole(グイード・ダ・コスティリオーレ)」で研修を受けた。ICIFは1991年、EUの支援を受け、800年前の城をリノベーションして設立された料理学校である。海外から研修生を受け入れ、同時にイタリアの食文化を発信する拠点となっている。
 今回、食や料理の現場取材にあたり、イタリアと日本で料理を経験してきた彼に取材にも同行してもらい、さまざまなアドバイスをもらった。また、彼は会津若松市の山際食彩工房にも1ヵ月間、インターシップとして滞在し、具体的なレポートを送ってくれた。
 最後に、今回の出版にあたり、前著『幸福な田舎のつくりかた』に続き、形にしてくださった学芸出版社の宮本裕美さん、そして各地で取材に協力してくださった皆さまに心より感謝申し上げます。

2014年9月
金丸弘美