NPOのためのIT活用講座
効果が上がる情報発信術

はじめに

 心ある社会起業家、NPO関係者のみなさん。はじめまして。
 みなさんは、国内最大級の公益事業コミュニティサイトCANPANプロジェクトをご存知ですか? (http://fields.canpan.info/)
 CANPANプロジェクトは、心ある市民、NPO、企業などの社会貢献活動を応援するソーシャルなネットワークです。日本財団と特定非営利活動法人CANPANセンターが企画運営しています。
 CANPANプロジェクトでは、NPOが、国や自治体の補助金や公的な助成金に頼らずに、自ら支援者やパートナー企業を集めて自立するのに役立つITツールとノウハウを、無償あるいは廉価で提供しています。
 例えば、発展途上国の自立支援では、「お魚を差し上げる=資金援助」より、「釣り竿をお渡しして釣り方をお教えする=ツールとノウハウ伝授」の方が大切だと言われます。同様に、CANPANプロジェクトでは、NPOがIT活用を通じて「自ら生き抜く力」を身につけることで、初めて社会的に意義のある活動を継続することができるのと考えています。
 「民が民を助ける」より豊かな社会実現のカギは、NPOの自立≒IT活用と言っても過言ではありません。

IT活用は、NPOの可能性を広げる万能薬

 CANPANは、“Can”(できる)と“Panacea”(万能薬)を組み合わせた造語です。CANPANプロジェクトが様々な効能を発揮し、日本をもっと元気にしたいとの思いを込めて名付けました。CANPANが提供する団体データベースやブログをはじめ、twitter・Facebook・Youtubeなど多くのITツールは、志のある社会起業家にとっては、まさに可能性を広げる万能薬なのです。
 私たち筆者2名=久米信行・山田泰久=は、CANPANセンターの理事を務めながら、全国でNPO関係者や企業のCSR担当者に、ITの効果的な活用法を広めて参りました。
 すでに、ITを使いこなすことで、共感と支援との輪を広げて、夢の小児がん病院や手話で学べる小中学校を設立するなど、大きな成果を挙げているNPOも続々と現れています。NPOが、本気でITを活用して、賢く粘り強く情報発信を続ければ、きっと社会を変えられると、私たちは確信しています。
 例えば、NPOが、ITを活用して、自ら広報宣伝や活動資金調達を上手に行うことができれば「自立」して「活性化」することができます。ネットワークを通じて、個人のサポーターや企業のパートナーを見つけ出して「連携」できれば、もっと大きな活動や良質な仕事を行えて、着実に成果を挙げられるでしょう。こうした草の根のNPO活動の積み重ねが、社会を変革していくのです。

これからの社会変革の主役はNPO

 21世紀の社会変革は、心ある社会起業家とNPOが主役となるでしょう。個人や民間企業の力も借りながら、NPOが主体となって、世の中を明るく変えていく時代になるのです。
 残念ながら、国や自治体は財政赤字で、もう余裕がありません。様々な公的サービスは削減されるか民間委託される方向に向かうでしょう。一方で、社会問題は、ますます細分化され複雑になっているので、公的な大組織では、きめ細やかに対応することも難しくなっています。むしろ地域や問題に密着した中小のNPOの方が、より低いコストで、効果的かつ心に響くサービスを提供できる可能性を秘めています。そのコスト削減とサービス向上の要がIT活用なのです。
 一方、民間企業も、厳しい国際競争に晒されています。一部の社会貢献意識が高い企業以外は、企業存続と利益追求だけで手一杯になるかもしれません。そんな時、心ある個人やNPO関係者が、社会貢献に熱心な企業の商品や株式を積極的に買うなど応援すれば、選挙以上に「世の中を変える力」になるでしょう。ここでも、NPO関係者の、ITを活用したクチコミ、ネットコミが、企業の行動様式を変える原動力になるはずです。
 

NPO増加×ITツール充実=明るい社会

 幸いにして、この十年間で、NPOの数も、社会起業家志向の人たちも増え続けています。専門知識がなくとも使いこなせる、無料か安価なITツールやサービスも続々と提供されています。最新のITツールをCANPANと組み合わせながら、効果を倍増する活用法も確立されつつあります。
 この本には、私たちがセミナーなどを通じてNPO関係者のみなさんにお伝えしてきたIT活用法のエッセンスが詰まっています。この本で紹介したシンプルな情報発信のノウハウを、みなさんが、まずは3ヶ月、そして3年、10年と続けていけば、必ずや目覚ましい成果に結びつくでしょう。

 ぜひ、本気でITを活用して、ご一緒に社会を明るく変えて参りましょう。

特定非営利活動法人CANPANセンター
理事 久米信行 山田泰久