政策学部でどう学ぶか


はじめに


 本巻は、同志社大学政策学部創設10周年記念として刊行された「政策学ブックレット」シリーズ全5巻の最後として編まれたものである。もちろん基本とする哲学は、編集委員会代表の真山達志が「刊行にあたって」で示したとおりであり、それは全巻を通しての大きな基本理念となっている。

 しかし、教員がそれぞれの専門に従って、一見難しそうなことを、平易に語り起こした第1巻から4巻までとは大きく異なり、「学び」の舞台で政策学部の学生たちが、私たち教員とともに10年に渡ってその喜怒哀楽のなかで展開し続けてきた臨場感あふれる、いわば政策学の研究のためのライブ活動を綴りあげたライフヒストリーである。しかもそれは、優れた歴史叙述であれば必ず視野におくはずの、将来を見据えた生活誌でもあるのだ。その具体的な要諦を、学生と教員とで創りあげた矜持とともにプレビューに代えて箇条書きで記しておこう。

《1》政策学部では少人数教育を重視している。それは学び方を学ぶFYE(First Year Experience)ではじまり、学問の基礎技能を身につけるアカデミック・スキル(Academic Skill)がつなぎ、専門演習(ゼミ:Seminar)で結実する。

  1. FYEは、学部開設当初において教員もその方法について様々な模索を試みつつ展開した。「大学入門クラス」ともいえるこうした少人数授業は、今では多くの大学でも取り入れているが、政策学部としてその出発点から一貫して基幹に据えてきた自負がある。
  2. アカデミックスキルは当初は日本語によるコミュニケーションの方法を学ぶCMJ(Communication Method in Japanese)と英語によるコミュニケーションの方法を学ぶCME(Communication Method in English)だったものを発展的に改組して、より専門演習につなぐ役割を明確化したものとなっている。
  3. ゼミにおいては、政策学部の学際性と個性的で多様な専門分野を有する教員が、多種多様な学びの機会を提供している。なお、1年時から一貫して、「問題の発見とその解決」を念頭に置いたカリキュラムとなっているために、プロジェクト型教育(Project Based Learning)の姿勢が色濃く反映されている。ただ本巻においては、紙幅の関係もあり、全てのゼミについて採りあげることができなかったことを容赦いただきたい。


《2》このような学びを支える場として、国内大学最大規模を誇るラーニングコモンズという「学びの共有空間」が存在し、政策学部の学生たちもゼミにとどまらず、多様に活用し多彩な学びに資している。

 こうした学びの場で成長した学生たちのリアルな声は、その多くがプロのライターの方々による「密着取材」が大きなベースになっているということを付記しつつ、本巻を通して彼ら彼女らの息吹を感じ取っていただければ幸甚に思う。

井口貢・多田実