まちづくりDIY
愉しく!続ける!コツ


さあ、一緒にはじめよう


 私たちの社会は、大きな変化があってもできるだけその影響を小さくして、現状を維持するように様々な制度、組織、仕組みがつくられてきた。できるだけ問題が起こらないように、そして問題が起こった場合には速やかに現状復旧ができるようにという、よくできた仕組みが作動してきたのである。私たちの意識もまた現状を維持することが望ましいと考えているところがある。
 しかし、地球環境の問題、人口減少社会への突入、そして2011年の東日本大震災などを踏まえると、時代の流れは急速に大きく変わりつつあることが実感される。我々が活動を拡大することで地球環境への負荷が増加する。人口減少社会における地域のあり方は、拡大を前提としたこれまでの成長戦略とは異なる。そして、東日本大震災はリジリエント(Resilient:回復力のある)な社会のあり方への転換を促すものなっている。
 しかし、こうした時代の変化に私たちの社会はまだまだ対応できていない。だから、様々な局面での閉塞感が私たちを取り巻いているのである。
 私たちが直面しているまちの課題に対しても、お金がない、時間がない、制度がない、取り組むための「場」がないなど、できない理由を並べることはさほど困難ではない。変化の時代には、既存の制度などが追いついていないから、取り組むことも容易ではないように感じることも多いかも知れない。だが、できない理由が明確になっても、直面する問題の解決にはならない。
 では、どうすれば良いのだろうか?
 その答えの一つが、小さな取り組みでも良いからまずは実行して、できることを実感してみることである(「小さな取り組み」については、岡田憲夫関西学院大学教授の提唱による「小さな事起こし」がヒントになっている)。このことがまさに本書の主題である「まちづくりDIY」なのである。小さな実践に取り組むためには、お金も時間も自分で都合をつけることからはじめれば良いのである。そして、こうした小さな活動が次第に大きな流れとなり、変化の時代に望ましい新たな社会を構築する大河になっていく可能性がある。
 まちづくりDIYは小さな実践であるが、社会へのインパクトは決して小さくはない。こうした取り組みが各地で拡がることで、より住みやすく、生きやすい社会を形成するきっかけになる最初の一歩だからである。
 Do It Yourself and Let's begin together! ── さあ、まずはできることから一緒にはじめよう。


 本書は、神戸国際大学経済文化研究所における研究組織プロジェクト17「魅力あるまちづくりを考える研究会」(2007年度)から取り組みをスタートしたものである。執筆者一同もこの研究会での様々な発表と議論を行うことで、本書をまとめる基礎体力を整えてきた。また、神戸国際大学からは出版に関する支援もいただいている。
 そして、本書の各章に登場する様々なまちづくりDIYを実践されている皆様の存在がなければ、この本は生まれなかった。
 また、本書の出版について多大なアドバイスを頂戴した株式会社学芸出版社の前田裕資氏がいなければ、本書は世に出ることはなかった。
 こうした本書に関係し、お世話になった皆様に厚くお礼を申し上げるものである。

土井勉