図説 わかる土木計画


はじめに 
 
 人々がより豊かな暮らしを送ることができる社会を創り上げていくためのアプローチにはいろいろありますが、社会基盤施設の整備を通じて、そのような社会を目指すことはとても重要な営みといえます。本書では、このような社会基盤施設の整備を行うための計画について述べています。

 今までに多くの土木計画に関する教科書が出版されてきましたが、その性格は大きく分けて二つに分類されると思います。一つは社会基盤整備に関する計画課題の明確化から事業評価に至る一連のプロセスを体系的に捉えた計画論的な色彩が強いもの、二つ目は、データの分析や最適化、そして予測・評価に関する数理的手法に重きを置いて記述したものです。本書では、どちらかというと後者の数理的手法に重きを置く内容にし、書名「図説 わかる土木計画」が示すように、図をふんだんに用い、わかりやすく記述することを心がけました。

 さらに、内容的には、国立高等専門学校機構において技術者教育の質保証のために作成した「モデルコアカリキュラム(試案)」の建設系計画分野の学習内容を参考に、1学期15コマで授業が完結できることを目指しました。この点において、高等専門学校において共通の教材となる性格を持っていると言えます。そして、大学の学部教育の教材としても、基礎的な内容を含んでいる点において、使い勝手の良いものとなっていると確信します。
 以上のような特徴を持つ本書は、土木計画とは何かに始まり、データの種類と分析手法、実験計画と調査の方法、データを活用した推測・予測手法、最後に計画の評価という順に構成され、全15章となっています。各章は基本的に解説、例題、演習問題で構成されており、学習した内容を例題を通して確認し、演習問題を解くことで定着させることができるように配慮しています。

 そして、執筆は高等専門学校と大学の授業に関する教育現場のニーズを最前線で的確にとらえている若手から中堅に至る先生方にお願いしました。そして実践に強い高専とどちらかというと理論重視の大学教員の程よいコラボレーションにより本書が出来上がったと思っています。学芸出版社の井口夏実、岩切江津子の両氏には、編集にあたり、特に「わかりやすさ」の視点から、迅速かつ的確にアドバイスをいただき、深く感謝しています。

 最後に、本書が、読者皆様の学習のお役にたち、教育・社会の現場で生かされることを強く願いますとともに、PDCAで本書を改善していきますのでお気付きの点をご指摘いただければ幸いです。


2013年12月

監修者 新田保次
編者 松村暢彦