RePUBLIC 公共空間のリノベーション


この本の使い方


理論と実践とアイデア
 この本は、理論と実践とアイデア、この三つから構成されている。

理論
 理論の部分では、この本の問題意識を述べている。
 社会的な背景のなかでこの本を制作しなければならないと考えた理由、そしてあるべき公共空間、そしてパブリックという概念の今後について考えている。
 同時にロングインタビューを二つ収録した。アートキュレーターの森司とプロデューサーの清水義次。僕から見れば、彼らは公共空間をすでにリノベーションしている実践者であり、同時に行動の背景を語ることのできる理論家である。その言説には多くの示唆が含まれている。

実践
 実践には2種類のページがある。
 一つはさまざまな事例を見渡し、見事に公共空間をリノベーションしている事例。掲載した写真には魅力的な風景が写しだされているが、そこに到達するまでにはさまざまな試行錯誤、コンセンサスを獲得するための活動が存在する。図面や写真だけからは見えてこない、こうしたバックストーリーにも注目している。それらは新たな公共空間を発明するためのヒントである。
 もう一つはOpen Aが手掛けてきた事例である。
 僕はこれらのプロジェクトの実践を通し、公共空間をなんとかしなければという思いが強くなった。設計プロセスのなかでの気づき、立ちはだかった困難、ブレイクスルー、そして積み残した課題。問題意識の断片が、これらの実践のなかにある。見やすくするために、Open A worksというメモを付している。
 メディアで紹介されるときはどうしてもサクセスストーリーの部分に光が当たり、苦難や失敗、ジレンマなど影の部分は見えにくい。しかし、現場でプロジェクトを進める立場になると、知りたいのは案外、その地味な部分だったりする。実践の部分ではこの視点を大切にした。

アイデア
 目が覚めるようなビッグアイデアを提示しているわけではなく、どちらかと言うとすぐにでも実現できそうな、でもありそうでない空間のアイデアを描いてみた。制度的にクリアしなければならないことも残っているが、少しの工夫や手続きを経れば実現できそうだ。逆に、これができないことが、公共空間の現状を表しているとも言えるだろう。手書きのスケッチで表現し、ポイントを余白にメモした。
 この本はどこから読んでもいいような構成になっている。ザッピング感覚で、自分の役に立ちそうな部分だけを抜き出し、参考にしてほしい。できるだけ多くのヒントや発想のスイッチを並べようとしたので、さらに深い情報が欲しい場合は、関連する言葉の検索から始めればいい。そう、この本は何かを始めるきっかけのようなものだ。