東日本大震災 復興まちづくり最前線


おわりに


 本書は、東大まちづくり大学院連続セミナー「復興まちづくり」における議論をもとに、被災自治体の首長の方々をはじめとして、さまざまな立場で東日本大震災からの復興まちづくりの第一線で奮闘する方々に執筆者として加わっていただき、復興まちづくりの現在と、これからの展望、課題をさまざまな視点から掘り下げようとしたものである。現在の復興まちづくりは、各自治体の復興計画が出揃い、そのもとで個別地区の復興事業の合意形成が積み重ねられている段階である。このタイミングで本書を企画した理由は、現実の復興の絵姿が見え始めた段階で、『スピードある復興』という呪縛から一旦離れて、復興まちづくりのビジョンを、もう一度、問い直すことが求められているのではないかとの思いからであった。
 本書は、このような問題意識のもとで、東日本大震災復興構想委員会委員として、また日本学術会議会長として、東日本大震災からの復興まちづくりに力を尽くし、本書の企画においても中心となった大西隆・東京大学教授の退職に時機を合わせて、学芸出版社『東大まちづくり大学院シリーズ』の一巻として刊行することとなったものである。
 城所、瀬田は、企画・編集の進行・調整役をつとめさせていただいた。執筆者の方々には、このような経緯から、たいへん厳しい時間的制約の中でご執筆いただいたにも関わらず、いずれも本格的な論考をお寄せいただいた。この場を借りて感謝の意を表させていただきたい。各章の論点は多様であり、一言でまとめることはもちろんできないが、各章を読んで改めて感じることは、各執筆者の方々の、東日本大震災からの復興を通じて新しい社会像をつくりあげるとの強い決意である。翻って考えるに、この決意は、すべての被災者の方々、復興に携わるすべての方々の共通した思いではなかろうか。本書が、このような思いと行動に些かなりとも貢献できることを期待したい。
 最後になったが、学芸出版社の前田裕資氏のご尽力がなければ、このような短期間で本書を刊行することは不可能であった。編者・著者を代表して感謝の意を表させていただく次第である。

2013年1月
城所哲夫・瀬田史彦