日本一のローカル線をつくる
たま駅長に学ぶ公共交通再生

あとがき


 2011年、この1年が地域公共交通存亡の天下分け目の最重要時期と思い、各地からの講演依頼を積極的に受けて、実態の理解と解決法や交通基本法の成立がなぜ必要かを訴えました。なんと北海道から九州まで全国で講演会が約30件、どこの地域も熱き講演になり、九州では立ち見も出るほどで、いかに地域の皆さんや事業者、行政が困っておられるのか、解決法を熱望されているのかがヒシヒシと伝わってきました。

 また両備ホールディングスのホームページで「交通基本法案が3月8日付、閣議決定されました。政局が混迷していますが、与野党の先生方も地方の苦境をおわかりなので、本法案は、政争の具にはならないと思います。良い流れですが、気を抜かずに頑張りましょう! 法案に財源がセットになってはじめて地域の公共交通が救われるのです! 延命型の公共交通政策から、夢のあるエコ公共交通大国に向けてのギアチェンジが必要です!」とお伝えし、必要なアクションとして各政党や行政に交通基本法の成立や地域公共交通の実情について陳情をお願いしたところ、全国から多くの共感をいただき、陳情や要望を各方面に寄せていただいて大変感謝しています。

 瀕死の状態を延命している多くの地域公共交通事業者は、交通基本法が早く成立し、予算が確保されて、将来に夢と期待の持てる事業へ転換することを願っていると思います。しかし、安定した公共交通サービスに変革するには、公共交通をどのレベルで維持、発展させるかの国家のビジョンを示しておかなくてはなりません。交通計画を県や市町村がつくるにしても、そのモデルがハッキリしていなければ、つくることができません。

 地方の路線バスは、大都市で使われた中古バスで、年金受給の運転手さんを安く雇っておればよいのか、それとも高齢化社会と環境に対応し、情報システム化された路線バスを義務づけるのかによってまったく計画が変わります。また、その財源をどうするのか、利用客数の増加に結びつかない社会的なサービスの負担をどうするかの問題があります。

 鉄道での公有民営の考えを、旅客船事業や路線バスの限界事業者に適用していくのかなども課題です。また、行きすぎた規制緩和をそのままにしておくことは、ザルから水の漏るような事態になるでしょう。少なくとも利用者利便の確保のためには、輸送の秩序を維持しなければ、安定的な輸送サービスを供給することはできないでしょう。

 多くの課題を、丁寧に一つ一つ、利用者目線と、将来を担う若者たちのための将来目線で解決し、真に世界に誇れる、夢の持てる「エコ公共交通大国」に進んでいく努力を、これからも皆さんとご一緒に続けていきたいと思います。

2012年1月
小嶋光信