都市づくり戦略とプロジェクト・マネジメント
横浜みなとみらい21の挑戦

おわりに

 みなとみらい21事業は、着工以来四半世紀を経過し、上物建設も道半ばまで到達した。この間に、幾多の社会経済情勢の変化と、これに関わる人や組織の変化があった。みなとみらいというプロジェクトは、その変化にたじろぐのではなく、むしろ逆手にとって活用してきた稀有なプロジェクトであると、わたしは思っている。
 卯月盛夫教授の招きで、この2年間、早稲田大学芸術学校で「プロジェクト・マネジメント論」を担当してきた。みなとみらい21事業は、その時々の情勢変化に対して、衆知を集めて課題を解決してきたという点で、プロジェクト・マネジメントの典型的な教材といってよい事業である。
 「都市計画」という言葉は、私の学生時代には、「世直し」の道具として、特別の響きを持っていたが、今は、その光芒を失いつつあるように思えてならない。先の見えない今の時代だからこそ、長期にわたり、創意と工夫をもって、相互の綿密な協力の下で、時間・費用・労力を効果的な形で投入し、壮大な成果を産み出すことができる「都市計画プロジェクト」を、自ら実践することに喜びを感じる人たちが必要なのではないか。
 この本は、卯月教授との有意義な意見交換と実践的な交流による部分が大きい。若い人たちが、みなとみらいの街づくりのすばらしさと、これを支えてきた都市づくりの技術についての総合的な理解を増進し、価値ある都市計画プロジェクトに参画することを夢見て、自らを訓練していくために、この本が機能するならば、わたしの喜びは大きい。
 最後に、このプロジェクトに関与した横浜市ほか多くの関係者に敬意を表するとともに株式会社横浜みなとみらい21代表取締役社長小椋進氏から賜った薫陶、企画部、推進部の諸君の協力、学芸出版社前田裕資、小丸和恵両氏の労および妻美代子の内助に衷心からの感謝を表して筆を置く。
 
 2009年3月 
渇。浜みなとみらい21代表取締役専務 
岸田比呂志