まち歩きガイド東京+


おわりに

 本書は、私たちTEKU・TEKUが1990年から続けているまち歩きについてまとめたものであり、主に執筆したのはTEKU・TEKU参加メンバーのうちの11人だが、十数年にわたってまち歩きをしてきた多数の参加者、私たちを迎えてくれた多くの街とそこの人たちも含めた、TEKU・TEKUというまち歩き活動の成果である。
 TEKU・TEKUにおける最大の発見はラビリンスの街である。ラビリンスの街は計画的に開発されたわけではなく、計画論から見ると模範的とは言えないにもかかわらず非常に魅力的である。むしろ、計画的でないが故に魅力的だといってもいい。なぜラビリンスの街が、計画的な街より魅力的なのか。そこに街の魅力の秘密がある。
 まちづくりに関する計画論は、機能に関するものが大部分だが、街は機能だけで成り立っているのではない。街は極めて多様な要素の複雑な集合であり、その魅力は単純に説明できないものである。そういう意味では、街の魅力の視点を計画論に的確に反映させることは難しく、魅力的な街をつくるためには、計画論だけでは限界があることを認識すべきなのである。
 それでは、魅力的な街をつくるにはどうしたらいいのか。計画論だけに頼らず、まちづくりの関係者が、街の魅力に対する認識を具体的なイメージとして共有し、街を魅力的にするにはどうすればいいのかを考え、行動することが必要なのである。まちづくりは、机上の計画や会議室での議論でできるものではない。自分たちの街を知り、魅力的な街を見ることで、関係者が街の魅力を理解し、共有することが、まちづくりの第一歩である。そして、そのためのツールとしての「まち歩き」を、本書を参考にして実践していただければ幸いである。
 なお、実際に街を歩くにあたっては、本書のマップだけでは情報量が不十分なので、市販の地図の併用をお勧めするが、時には路地を彷徨って貴方だけのまち歩きを楽しむのもいいかもしれない。
 本書をまとめるにあたって、学芸出版社の前田裕資氏には、企画段階から適切に指導していただき、さらに本書で取り上げた街を実際に歩いてアドバイスをいただくなど、大変お世話になった。この場を借りて感謝の意を表したい。

2008年11月
TEKU・TEKU