花と緑のまちづくり


書 評
『農耕と園藝』((株)誠文堂新光社)2006.3
  先進的な花と緑のまちづくりに取り組む世界のガーデンシティでは、園芸・ガーデニングが単なる趣味ではなく生活の一部となり、ガーデンクラブを組織して街の美化や観光効果を高めるなど、『まちづくり』の大きな推進力となっている。
  そこで本書では、ニュージーランドのクライストチャーチ、オーストラリアのキャンベラ、イギリスのコッツウォールズ地方などの先進的なガーデンシティのまちづくりを巡り、その取り組みを紹介している。さらにガーデンシティを目指す日本国内の取り組みを紹介しながら、花と緑のまちづくりの進め方、実践、ガーデンクラブの育成と活動に関しても解説され、暮らしやまちづくりに花と緑を活用する方法を説いている。
  行政の緑化担当者、造園・園芸関係者だけでなく、広くガーデニング愛好者、オープンガーデンを推進する人などにもすすめたい書である。

『環境緑化新聞』 2005.11.1
まちづくりへと誘う花と緑の活用術
 ニュージーランドのクライストチャーチでは、全人口の80%がガーデニングに勤しみ、市の予算の15%が花や緑の施策に使われ、産官学民が一体となって取り組んでいるという。世界一のガーデンシティというのは納得である。日本のガーデニング人口は全人口の30%前後。まだまだガーデンシティには遠いようだ。
  本書は、世界のガーデンシティと日本の先進的な取り組みから、花と緑を暮らしの中に取り込み、まちとしての魅力を高めていく術を説いたもの。著者は兵庫県みどり公社の花と緑のまちづくり研究所所長。国や地方自治体には、ガーデニングを日常の暮らしとまちづくりに密接に反映するよう国民の意識を向けて欲しい。しかし重要なのは、家庭と地域づくりを花と緑によって結び、実践すること。ガーデンクラブの存在は不可欠だ。阪神淡路大震災後に兵庫で生まれたガーデンクラブの話題等も随所で紹介する。
  これからの日本が、海外のガーデンシティでも多用されている日本の植物や手法の良さを再認識し、風土を活かした独自のまちづくりを行うための教科書だ。