小規模区画整理のすすめ


書 評
『測量』((社)日本測量協会)2007.1
 かつて区画整理といえば、数百ヘクタールに及ぶビッグプロジェクトであったが、バブルの崩壊とともに姿を消してしまった。しかし、土地を買収せずに公共用地を確保し、土地の価値を高め、都市の再生に貢献するという……区画整理の理念を今こそ活用すべきときである。
 戦後、乱開発された都市の一部には、敷地形状が悪い、街路が狭い、建ぺい率が低い……など、多くの問題を抱えながら、どうすることもできない地権者も少なくない。
 本書は、「こんなことで困っていませんか?」と10件の問題ケースを掲げ、その解決法として小規模区画整理の手法やメリット、具体的な事例を懇切丁寧に解説している。続いて街なかの整備方策について、28件のQ&Aがあって、法律や税金の質問まで、丁寧に答えているのも嬉しい。
 最後に、1ヘクタール以下、地権者5人以下といったごく小規模の事例から、約20ヘクタール1街区程度の区画整理まで、各種タイプ別18個のデータが紹介されている。
 最近、商店街の衰退や、地域住民の高齢化が問題になっているが、唯一の解決策は、NPO法人や民間の活力で小規模の区画整理を行い、住みよい「まちづくり」を達成することであろう。
 土地区画整理士は勿論のこと、中小の測量会社、土地家屋調査士、市役所のまちづくり窓口の担当者の方々に是非、常備をお薦めする実務書である。
(福永宗雄)