都市観光でまちづくり


書 評
『地域開発』((財)日本地域開発センター)2004. 7
  都市観光を進めるには都市に魅力が存在しなくてはならず、かつ、それは住む人、訪れる人の両者をひきつけるものである必要がある。そのようなまちづくりを本書では「住んでよし、訪れてよしのまちづくり」という言葉で表現し、メインテーマとしている。
  本書は、旅行業、飲食・宿泊業といった観光事業者、企業人、自治体関係者、芸術家、マスコミ、学者など多様な顔ぶれから構成される「都市観光を創る会」の3年間の活動をまとめたものである。まちづくりにおける都市観光の重要性を説き(第1章)、都市の魅力というものを分析した上で(第2章)、都市観光を進めるための方策と国内の具体的事例を紹介し(第3、4章)、都市観光の展望が議論されている(第5章)。
  都市観光方策の理論的考察とともに豊富な事例が紹介されているため理解しやすく、また、実務的にも参考になろう。様々な分野の著名人による「訪ねたいまち、住みたいまち、心のまち」と題したコラムも面白い。

『都市問題』((財)東京市政調査会) 2004. 2
  2003年1月、観光政策のあり方を検討する観光立国懇談会が開催され、訪日観光客数を倍増させることなどを目標とした報告書がまとめられた。ようやく、わが国も観光の推進に取り組むようになったといえよう。
  とはいえ、行政・民間ともに、観光の重要性を深く理解している向きは少ないのではないだろうか。一部の都市を除けば、観光は政策の立案において軽く扱われてきた。それは、観光とはあくまで「客寄せ」であるという意識のせいであろう。
  そのように考えている人が本書を手にすれば、意外な感じを受けるに違いない。これまでまったく別の分野と考えてきた「観光」と「まちづくり」が並んでタイトルになっているからである。しかし一読すれば、両者に深い関係があることが分かる。文中、「住んでよし、訪れてよしのまちづくり」という言葉が出てくるが、まさに本書の精神を表している。
  構成は、以下の通りである。まず第一章「まちづくりの新潮流」で総論が述べられ、第二章の「魅力ある都市とは」で都市観光の魅力について触れられている。続く第三章「都市観光でまちづくり」では、まちづくりにおいて都市観光手法をどう活かしていくかが検討されている。そして第四章「全国の都市観光に向けた取り組み」では、金沢市や松本市のような誰もが思い浮かべる観光地から、福島市や北九州市といった従来は観光と無縁と考えられてきたところまで、多くの実例が紹介されている。最後に第五章として、有名料理人や市長らによる対談が収録されている。また、随所に設けられたコラムによって、読みやすいように配慮されている。
  本書から学べることは数多いが、やはり「観光を重視することは、これからのまちづくりの基礎である」という主張に尽きるだろう。日本ではいまだに、「観光に力を入れることは住民軽視だ」とか「観光政策は有名都市が行うものだ」などという理解が少なくない。しかし本書を読めば、それらが誤解であることが分かる。都市の魅力を高めることは、なによりそこで生活している人にとって大切なのである。その魅力が外部の人に伝わり、観光客として訪れるようになるのだ。
  このように考えると、観光政策が一部の都市に限られるものではないことも分かるだろう。都市観光はすべてのまちづくりに共通する土台なのである。繰り返しになるが、「住んでよし、訪れてよしのまちづくり」こそ今後の都市政策の重要課題なのであり、観光を重視した政策はそのためのツールといえる。観光に携わる人はもちろんのこと、まちづくりの未来に関心ある人全員に、本書を読むことをおすすめしたい。
(Mo)


『民家』(日本民家再生リサイクル協会) 2004. 1
  この本は、木村尚三郎氏を会長とする「都市観光を創る会」のメンバーを中心とした委員による編集である。この会は、これからの「観光」と「まちづくり」を同じ土俵のなかで考えていこうと、旅行や宿泊などの観光事業関係者のみでなく多種多様な人々が1999年から全国各地を訪れ、調査や実践的活動を行ってきた。
  単に名所や名物を求めてまわる物見遊山的観光より、その都市や地域の食や文化、生活と触れるような観光こそがずっと奧の深い魅力的なものになり得る。訪れる人々を魅了するような町づくりは、その土地の生活自体が魅力的でなければならない。それは、全国で深刻化している地方都市の衰退化をどうするかという課題とおおいに関係している。つまり、「住んでよし、訪れてよしのまちづくり」における人々の交流の活性化により、日本の経済や社会が新しい方向を見出せるかもしれないという視点を示している。
  この本では、この会の三年間の成果として、日本や世界の都市の魅力の解剖、まちづくりの方策の提案、全国各地で繰り広げられているまちづくりの取り組み事例を収録している。
(荻野邦彦)


『建築とまちづくり』(新建築家技術者集団発行) 2003. 12
  最近は、まちづくりが「観光」という起爆剤によって元気付くケースが目立っている。それも、これまでのような意味の観光ではなく、新しい価値観によるものが芽生えてきている。
  たとえば、私も参加の経験がある滋賀県長浜市。そこでは古い街並みと、それを生かす日常の建築美と振る舞いが人を引きつけていた。人が通らないシャッター通りに灯がともったのである。
  新建の建まちセミナーが行われた飛騨古川も、町並みが宝となり人々を山奥まで引きつけている。
  もう一方では、山奥の温泉街の小さな商店街でありながら、小さな宝を大事にしている鳥取県の三朝温泉商店街がある。ここでは、小さな商店の中に商売や人間のルーツを展示しているミニ美術館が店の中に生み出されていた。訪れる人々の心の中に明かりを灯す活動である。
  全国にその名をとどろかせた大分県の由布院。センスのある上質のしつらいに、訪れた人々が圧倒された。その価値観が観光の起点となっているのである。
  「由布院雑記/暖炉の火を眺めながら、ベートーベンを聴く。椅子はハンス・ウェグナーをはじめとするデンマークのデザイン。床は煉瓦敷き、色濃く塗られた柱や梁は、日本の民家の古材が使われている。しかし民芸調に陥ってはいない。
  昨晩の酔いがほのかに残った身体を、とても優しい朝のひとときが包んでくれた。
  由布院の、「亀の井別荘」「玉ノ湯」は饒舌であった。
  その名とたたずまいを全国に発信し、様々な企画を打ってきた由布院。
  世界に発信できる、日本の感性のひとつがそこにはあった。」
  このような意味で、観光がどのような広がりをもっているのか。その可能性を本著では掘り下げている。さまざまな人々のコラムも大変興味深い。
(ま)