発行にあたって

「都市観光を創る会」のメンバーは、旅行業、飲食・宿泊業など観光事業者だけではなく、その他の企業人、自治体関係者、芸術家、マスコミ、学者など、その顔ぶれは多様である。会員数一六五名で一九九九年七月にスタートして以来、会のメンバーは全国各地を訪れ、都市観光調査、イベント、食のコンテスト、街歩きマップの顕彰など、さまざまな活動を行ってきた。こうした活動を通じ、訪れた地域の人々と直に語らうことで、地域の歴史や文化に触れ、人々の息吹とエネルギーを肌に感じ、都市観光について多くのことを学ばせていただいた。

ここに、これまでの三年間の活動の成果をとりまとめ、『都市観光でまちづくり』を刊行する運びとなった。ぜひ、多くの方々にご一読をいただき、都市観光についての議論が沸き起こり、よりいっそう魅力あるまちづくりが全国で進むことを期待したい。また、ぜひ、本書の内容についてのご批判もいただきたい。

もともと「都市観光を創る会」の発足は、旧運輸省が主管してきた「観光」と、旧建設省が担ってきた「まちづくり」について、縦割りを廃し、同じ土俵で考えていくことを目的とするものであった。「これまで『観光都市』と呼ばれた数々の都市のように、単に名所旧跡があるというだけではなく、美しい自然環境や景観、その土地固有の文化が存在し、また、おいしい食べ物と人情と人々の生活の知恵もあり、訪れる人を魅了する都市をつくるには、観光客である第三者の目を意識したまちづくりからスタートさせなければならない」という考え方が発端であった。

木村尚三郎(「都市観光を創る会」会長、静岡文化芸術大学学長)氏も、巻頭言で触れているように、「都市観光を進めることはすなわち、まちづくりを進めること」である。『安心』、『歩く楽しさ』、『食とみやげ』の三つのある都市は、観光客にとって魅力ある都市になるだけではなく、地元の人々にとって、生きる自信と誇りを与えるという。つまり、都市観光を成功させる秘訣は、「住んでよし、訪れてよしのまちづくり」を実践することにほかならない。「住んでよし、訪れてよしのまちづくり」を実践するには、行政だけではなく、民間事業者や住民、NPOが参画し、ともに観光を考えていくことが求められる。このような問題意識から、本書は立場を異にする多くの方々に執筆いただいている。

第一章では、「まちづくりの新潮流」と題し、都市観光の時代が訪れたことを紹介した。第二章の「魅力ある都市とは」においては、国内外の都市の魅力の解剖を行い、続く第三章「都市観光でまちづくり」では、都市観光を具体的に進めるための方策を取り上げた。第四章「全国の都市観光に向けた取り組み」では、各地域で進んでいる都市観光の取り組み事例で、他の地域にも応用可能なものをできるかぎり具体的に掲載した。

また、各界で活躍する会のメンバーには「訪ねたいまち、住みたいまち、心のまち」と題するコラムを執筆いただいた。国内外の都市についての各人各様の印象をお楽しみいただきたい。

さらに、「都市観光に求められるもの」と題して、観光に日頃からかかわる方による座談会を開催し、その内容も掲載した。

観光調査をはじめ、会の活動にご協力をいただいた各地のご関係者、編集委員会の運営、執筆といったかたちで、本書の作成・出版に際して多大な尽力をいただいた凸版印刷梶A(財)日本交通公社の諸氏の労に感謝を申し上げたい。

学芸出版社編集部の前田裕資・永井美保の両氏にも深く謝意を表したい。

以 上
東洋大学助教授 白石真澄